戦略的工場経営ブログ経営者が独力で腹落ちに至ることは容易ではない

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1.生産性向上が日本の課題

人口減少モードにある日本では生産性向上が喫緊の課題です。グローバルでの低生産性が指摘されています。公益財団法人 日本生産性本部 「労働生産性の国際比較 2022」によると下記です。

●OECD加盟国38か国中
国民1人当たりGDP  24位(2021年)
就業者1人当たり労働生産性  29位(2021年)
就業時間1時間当たり労働生産性  27位(2021年)
製造業の労働生産性  18位(2020年)

日本はもはや先進国ではないのかもしれません。GDPは国で生み出す付加価値額です。言い換えれば給料の原資のようなもの。そのGDPは90年後半より500兆円台で横ばい。加えて国民1人当たりGDPが24位で低迷しています。給料が伸びる環境にありません。

下記は中小製造企業と大手製造企業の従業員一人当たり付加価値額(年間)です。2003年から5年毎の推移で2020年まで示しました。

企業規模別に見た、従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)の推移

中小製造企業
2003年 517万円
2008年 536万円
2013年 524万円
2018年 554万円
2020年 520万円

大手製造企業
2003年 1,301万円
2008年 1,044万円
2013年 1,305万円
2018年 1,367万円
2020年 1,180万円

(注)
1.ここでいう大企業は資本金10億円以上、中小企業は資本金1億円未満の企業。
2.平成18年度調査以前は付加価値額=営業純益(営業利益-支払利息等)+役員給与+従業員給与+福利厚生費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課とし、平成19年度調査以降はこれに役員賞与、及び従業員賞与を加えたもの。(出典:中小企業白書2022年版)

この数値は概ね1人当たり利益+給料を表わします。中小従業員の給料を増やせないのはこの数値によるわけです。大手の半分とわかります。

ただ、それよりも注目しなければならないのは、数値の変化です。中小だけでなく、大手も20年間ほぼ変わっていません。この数値はあくまで平均値ですが、多くの就業者は豊かさを感じることなく、時間だけが過ぎていったと推測されます。これが現状です。

就業者の7割は中小企業に所属しています。したがって、生産性向上の担い手として、中小経営者に注目が集まるのです。

ただし、多くの中小製造企業の収益力を踏まえると、昨今、期待されている賃上げも簡単ではありません。簡単なことではないですが、簡単ではないからこそ、経営者が先頭に立って我が社を変え、付加価値額をドンドン積み上げるしかないのです。

弊社は挑戦する経営者の方々を力一杯、後押しをして参ります。儲かる事業モデルに変えることが経営者の仕事です。

2.中小企業で迫られるビジネスモデルの革新

中小企業白書2022年版は下記のように説明しています。

経営環境が不可逆的に変化する中にあって、大企業であっても、従来のビジネスモデルから脱却し、新たなバリューチェーンの構築、ビジネスモデルの組み換え、経営資源の大胆な再配分が必要となっている。

出展:中小企業白書2022年版

大手であっても改革が求められています。中小企業も、自社の技術力、製品の質、開発力、提案力などを基に、新しい販路を開拓する姿勢が必要とならざるを得なくなりました。

白書では従来と対比させて、今後対応が必要な産業構造と経営構造を説明しています。

●産業構想

・従来型の産業構造
大量生産モデルにもとづく大手企業と請負企業との受発注

・今後対応が必要な産業構造
独自に商品開発、グローバル展開、DXの加速、ポストコロナの社会変化

●経営構造

・従来の経営構造
技術と品質を磨く経営
職人型経営
規模の経済、大量生産、効率性追求、コストと納期重視、社員能力の均一性

・今後対応が必要な経営構造
付加価値額を上げる経営、商品開発、顧客開拓、受注力
規模を追わない、多様な需要に着目、商品・サービスの差別化重視、納期スピードは武器、社員能力の独創性・主体性

規模の経済、大量生産、効率性追求だけで儲かる時代なら、中小製造企業は大手企業から舞い込む仕事を淡々とこなせば十分でした。技術と品質を磨けば儲かりました。内向きの仕事でよかったのです。

しかし、時代が変わりました。内向きではなく、市場に向き合って、新たなお客様とご縁を結ぶ努力をしなければ、中小であっても生き残れません。

不確実性の高い時代は唯一の正解は存在しないので、数多くの挑戦と苦難を積み重ねること、失敗したとしても再チャレンジすることが、新たな時代の未来を切り拓き、成長を実現することにつながると白書では説明しています。

3.経営者に求められる「自己変革力」と第三者の支援の必要性

白書ではポストコロナ時代を迎えるに当たって、中小企業事業者においても「経営力そのもの」および、経営者自らが、環境変化を踏まえて経営課題を冷静に見極め、迅速果敢に対応・挑戦する「自己変革力」が求められていると説明しています。

「経営力そのもの」
 「自己変革力」

ただし、ここで中小製造経営者は考えなければなりません。大手と違って有する経営資源が限られています。やりたくてもできないことの方が多いのです。

経営資源の制約を鑑みれば、「経営力そのもの」を磨き、「自己変革力」を高める仕事を経営者が独力で行うことは難しいのです。そこで、白書は、第三者による支援が重要となってくると指摘しています。

経営者自身の「腹落ち」が必要「経営力そのもの」を磨き、「自己変革力」を高める仕事を第三者による支援を得ながら進めるに当たって必要なのは、当事者である経営者が十分に「腹落ち」(納得)していることです。

そうでなければ、言動を変えられません。誰かに言われたことを鵜呑みにするだけでは「腹落ち」には至らないのです。この腹落ちに至るためにも第三者である支援者からの導きが必要であると白書は説明しています。

経営者が独力で腹落ちに至ることは容易ではない。

多くの中小企業事業者に見られる、自己変革を妨げる典型的な障壁の中には、経営者が自社の課題に「向き合わない」姿勢が問題となっているケース、例えば、過去の成功体験などが「認知バイアス」となり、経営者が現実に向き合えなくなっているような例も少なくない。

このような経営者は、経営環境を客観的に認識することができなかったり、複数の選択肢から最適なものを選び取ることが困難であったりするため、第三者である支援者から課題設定プロセスへの支援を受けながら、課題解決に向けた取組に腹落ちしていくのが通例である。

また、腹落ちに至った後のフォローも支援者が行うことで「自己変革力」の会得までしっかりとした道筋が描かれたことになる。

出典:中小企業白書2022年版

4.経営者が独力で腹落ちに至ることは容易ではない

・知っていること、分かっていること
 ・できること、やること

両者は違うとしばしば言われます。

ジョギングやダイエット。健康にイイと分かっていますが、なかなか長続きしません。一人でやっていると、「まぁ、いいや」という弱気の影響を避けられないのです。

そうした人たちへのサービスがビジネスになっています。どうしても成し遂げたい人は外部の力を上手に活用するのです。

儲かる工場経営にはお作法、知識の仕組み化や手順があります。ただし、それを我が社に適用するには、試行錯誤、トライ&エラーが欠かせません。

知ることや理解するだけなら、一定期間、学べばそうなります。しかし、工場経営は学問ではなく、実学、成果を出してなんぼのもの。経営者の熱意が無ければやり遂げられないのです。

さらにここで大切なのが「腹落ち」であると白書は指摘しています。
・経営者が独力で腹落ちに至ることは容易ではない。

後押しをしてくれる外部の力を借りるのです。もたもたしていると、我が社は業界、市場、競合先から置いてけぼりを喰います。

時は金なり。外部の力を借りて、さっさと取り組んだ方がお得であると白書は教えてくれています。

貴社では外部の力を上手に活用していますか?

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