戦略的工場経営ブログ下請製造企業が新たな事業形態を構築した事例

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中小製造企業は、豊かな成長のため、新たな付加価値を生み出す事業形態を考え続ける、と言う話です。   下請け企業が高付加価値化を目指し、戦略を大きく転換させて成功させた事例です。 コア技術を極め完成品を提供できる体制を構築し、自社ブランドを高めました。 こうした現場は未来志向で働きがいがあります。    

1.下請製造企業が目指すべき2つの道

下請け型のビジネスモデルのままでは、中小製造企業の存続と成長は難しいです。 豊かな成長に欠かせない新たな付加価値を生み出す機会が少ないからです。   生殺与奪権を親企業に握られています。 下請製造企業は下請け型ビジネスモデルから脱却しなければなりません。 次世代を担う若手人材に儲かる工場経営を引き続くためです。   取るべき道は2つあります。   1.コア技術のブラシュアップと元請けの多角化戦略 2.コア技術を極めた自社ブランド戦略 下請製造企業が付加価値拡大で目指すべき2つの道   どちらにせよ「ほんとうのコア技術」を見極めることが重要です。 その「ほんとうのコア技術」をどのように生かすべきか戦略を立てます。   徹底的にそのコア技術を磨き、コア技術自体で勝負する道は前者の戦略です。 自動車業界の部品メーカーが事例として挙げられます。 デンソーやボッシュが相当します。   また、後者は製品(サービス)が完成された形で市場に提供されるケースが多いです。 直接に市場と向き合うことになります。 自動車業界ではトヨタ、ホンダ等の組立完成品メーカーが相当します。 営業力、販売力も事業拡大に欠かせない要素です。   自社のコア技術を磨きあげることはもちろんのこと、外部の力も活かします。 組み合わせることで、新たな付加価値を創出するのです。 自動車は数十万個の部品からできています。 メーカーとしての「システム」の品質が重要なビジネスモデルでもあります。   メーカーのシステムとして「トヨタ生産方式」はあまりにも有名です。 生産性の高い生産ラインのイメージが浮びます。      

2.国からそのビジネスモデルが注目されたセーレン

2015年11月に未来の産業を話し合う政府主催の官民対話が開催されました。   トヨタ自動車や米アマゾン・ドット・コムと共に招かれたのがセーレン株式会社です。 福井県福井市に本社を置く繊維メーカー です。 繊維産業が衰退する中でも業績は好調です。   招かれた背景には、不況を乗り越えるために構築されたビジネスモデルがあります。 865b8c7dbaf1c427818a6e2bf3599084_s セーレンはもともと、下請け型のビジネスモデルで事業展開していました。 繊維大手から原糸を買い、染める「賃加工」に依存した典型的な下請製造企業。   その下請製造企業が一貫製造体制を構築したのです。 織、編、縫製と16種ある繊維の製造販売工程を買い集めました。 不況という外部環境を成長の機会としたのです。   そして、染色システム「ビスコテックス」を独自に開発しています。 多品種・小ロット生産の傾向に合わせ、企画から販売までの一気通貫システムです。   このシステムを活用し、高島屋を販売窓口として、デジタル生産サービスを始めました。 2015年9月のことです。   端末からデザインや色の要望を顧客に聞きます。 そして、「世界にこれしかない1品」を福井にある工場で集中生産するのです。   アパレル業界では3割が安売りや廃棄に回ると言われています。 その業界にあって、在庫を持たずに大量生産するモデルを構築しました。   こうして、ビジネスモデルを変え、下請け型の成熟事業を成長事業へ転換させたのです。 マスカスタマイゼーションを見事に実践しています。   高島屋のホームページには、セーレンの提供しているビジネスモデルが下記のように紹介がされています。 clothing-store-984396_640  
パーソナルオーダーViscotecs 「ほかにはない特別な一着がほしい」 というお声にお応えし、 セーレン㈱が開発した 世界初のシステム: Viscotecs(ビスコテックス) によりパーソナルオーダーであなただけの 一着をお作りします。 お客様が等身大モニターでご試着イメージを 確認しながらお好みのシルエット・柄・色を デザインできるシステムです。 オーダーから約3週間であなただけの商品をお渡しします。

(高島屋HPより)

    「世界初のシステム:Viscotecs(ビスコテックス)」と共に、社名もしっかりと紹介されています。 完成品を提供できる強みもあって、ブランドも構築できています。 (出典:日経新聞2016年3月7日)      

3.モノよりもコトが消費者から重視される

モノよりもコトが消費者から重視される昨今です。 1.コア技術のブラシュアップと元請けの多角化戦略 2.コア技術を極めた自社ブランド戦略 業種業態にもよりますが、後者の戦略の方が付加価値を生み出す機会は多いです。 製品(サービス)の一部ではなく、完成された製品(サービス)で市場へ届けるからです。 機会が多い分、負担も増えます。   セーレンでは従来、賃加工の染め工程のみでした。 そこからから16工程へ増やしました。 下請け型なら1つか2つの工程を担えば仕事になります。 そこから、工程を複数組み合せる状態へ事業形態を変える必要があります。 その結果、製造工程上、管理工数は増えます。 が、付加価値を創出する機会が増えているとも解釈できます。   つまり、現場の知恵を織り込む機会が増えるということです。 また、消費者が気が付いていない「コト」を仕掛けることだやりやすくなります。   そうして出来上がった製品の価格決定権を自社の手で握ることができるのです。 製品の付加価値が高ければ高いほど、そうです。   消費者が気が付いていない「コト」の価格は自社で決められます。 誰も口出しできません。   当然、前者の戦略でも、極めて強力なコア技術があれば、勝者になることは可能です。 日本初、世界初という付加価値を顧客に提供し続けられるならばです。   ただし、単独の固有技術勝負は競合が出現した場合、価格競争に陥ることになります。 競争の構造が単純だからです。   小さい、薄い、軽い、細かい、等の定量的な仕様勝負。 圧倒的な独自性が求められます。 消費者の「コト」へ訴求するかどうかの視点が欠落するケースも多いです。 かっての国内家電メーカーがそうであったと指摘されています。 前者の戦略を採用する場合、十分に見定めなければならないことです。      

4.中小モノづくり現場で目指したい戦略

価格の決定権がある。 付加価値を生み出す機会がモノづくり現場に一杯ある。 下請け時代よりも苦労は大きいですが、現場も仕事のやりがいを感します。   セーレンの現場の人は自社を誇らしく感じずにはいられないでしょう。 販売窓口となっている高島屋のHPを見るたびに、そう感じるはずです。   高島屋は誰でも知っているデーパートです。 このデパートのHPに自社の事が紹介されているのです。   「ほら、ここにウチの会社の名前が出てるだろう?」 「ここにある”世界初の・・”ってある仕事をやっているんだよ。」 家族に誇らしげに説明するお父さんの姿が目に浮かびませんか?     やる気200%の現場で支えられている工場は常に未来志向です。 中小製造企業の経営者はこうした状況を目指しています。 儲かる工場経営を次世代へ引き継げるからです。 経営者は安心できます。   付加価値を新たに生み出す仕組みができれば、足元のことは部下に任せられます。 経営者は5年先、10年先のことを考えられるのです。   経営者は「今」に煩わされることなく、存続と成長のモノづくり戦略を考え続けてください。 儲かる工場経営では、経営者が常に5年先、10年先を見通す仕組みをつくります。     5年先、10年先を見通す仕組みをいっしょにつくりませんか?   まとめ。 中小製造企業は、豊かな成長のため、新たな付加価値を生み出す事業形態を考え続ける。
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