貴社には、不良品(不適合品)をフォロー・評価の対象とした会議がありますか?
1.技術開発と改善活動で求められる2つの視点
コア技術の深耕・強化抜きに製造現場の存続と成長はあり得ません。
イノベーションが欠かせないのです。
コア技術に焦点を当てた技術開発の手法や手順を独自に持っているか?
経営資源に制約がある中小製造業では重要なことです。
技術で戦う世界で勝ち抜くには、先手必勝です。
スピードが求められます。
従来の思い付きや不必要な試行錯誤による技術開発では、生き残れません。
技術開発は、そもそも不確実性の高い取り組みです。
だからこそ、手法や手順を確立しておかないと、取り組み自体が不安定になります。
解決すべき技術課題を明確に設定した後、課題を分割して、適用すべき要素技術を探索するのです。
貴社独自の技術開発ノウハウを積み上げます。
(技術課題を分割して要素技術を探索する)
さて、改善活動のテーマは経営課題と関連付けて選定します。
その意味で、改善活動のテーマ選定は経営者の仕事でもあるのです。
ただ、具体的なテーマへの落とし込みは現場に任せます。
経営者は、経営課題となる大目標および現場活動と関連した中目標を決めるのです。
現場は、大目標と中目標に沿って、具体的なテーマへ落とし込みます。
大目標と中目標を睨みながら、具体的なテーマへ落とし込む視点は2つです。
・現在すでに発生して、困っている問題を解決すること。
・将来、困ることに繋がりそうな、何か思わしくない状態を解消すること。
経営課題と関連していることがポイントです。
(単なる現場の困りごとの解消では部分最適にとどまります。)
つまり、改善テーマの対象として、
・起きたことを選択する
・
まだ起こっていないことを選択する
どちらかです。
大目標と中目標に関連した、現在と将来の視点です。
技術開発のテーマ選定の視点も同じです。
技術開発の手順や手法のなかで、このテーマ選定は極めて重要な作業です。
今と将来のあるべき状態を比べ、これしかない!というテーマを選定します
そして、技術開発で、将来のあるべき状態を設定するのに必要なのが・・・・・。
「今」、現場で活用されている技術を知り尽くしていることです。
今を知らなければ将来を語ることは絶対にできません。
固有技術の強みと弱みを把握していること。
特に、弱みの把握が技術開発のキモになります。
生産ラインで言うなら、発生している不良品(不適合品)に熟知していることです。
2.不良品をフォロー・評価の対象とする
現場では毎日、いろいろな事が起きています。
儲かる生産管理には、起こった出来事をフォロー・評価する場が必要です。
現場で起きている出来事をフォロー・評価する場がなく、全て現場へ丸投げ状態を思い浮かべて下さい。
生産管理や工場経営が機能していると言えるでしょうか?
そうした工場には、現場力や技術力を付加価値(利益)に変換しようという意思が全くありません。
現場では、作業が黙々、淡々と処理されていくだけです。
現場のモチベーションも高まりようがありません。
経営者が最も避けたい状況です。
さて、”納期”を評価・フォローの対象としている現場は多いです。
生産指示どおりに進んで、納期に間に合うか。
納期を中心として進捗を評価します。
朝礼後、昼一番、夕方に、
現場、各工程のキーパーソンと現場リーダーや管理者、スタッフが集まり30分程度、情報の交換します。
納期を遵守する風土は、こうした場から生み出されます。
一方、”不良品(不適合品)”を、フォロー・評価の対象としている現場はどれほどあるでしょうか?
中小製造業の現場で不良品を対象にして、
「定期的」にフォロー・評価をするところは少ないと感じています。
ただし、それでも、品質不適合品を社外へ流出させることなく、なんとかやれているところも多いです。
それは、モノづくりを支える現場の技能、ノウハウ、自主性を含んだ現場力が高いからです。
現場の属人的な対応で、乗り切っているとも言えます。
日本が誇る現場力ですが、5年先、110年先を見据えると少々不安です。
こうした現場力は、ベテラン作業者が引退していくとともに低下します。
モノづくりのノウハウが、暗黙知として、ベテランの技能、知恵という形で蓄積されていました。
それが、ベテランの引退と共に消えていくのです。
いよいよ、ノウハウの見える化を図る必要性に迫られています。
コア技術を把握して、
現場の強みや弱みを、客観的に評価する仕組みの必要性が高まってきたということです。
現場力に頼りすぎないことが、将来的には肝要なのです。
そこで、不良品(不適合品)をフォロー・評価する場を設けます。
不良品を対象にした情報交換、打ち合わせ、会議の場です。
コア技術の弱みが見えてきます。
将来の目指すべき状態を設定する手がかりを与えてくれるのです。
不良品は、要求仕様を満たせなかった製品です。
生産技術、製造技術の”弱い”箇所を語っています。
不良品を分析し、発生原因を究明すると、
生産ラインが抱えている生産技術、製造技術上の問題点が見えてくるのです。
そこから、解決すべき技術課題が特定されます。
発生原因を究明する過程で、絶対に知っておかねばならないことがあります。
・
生産設備
・製造工程
・製造ノウハウ
・原材料
等々、モノづくりに関するあらゆる知識や情報です。
こうした知識や情報があって始めて、原因の究明が可能となり、その結果、対策が打てます。
そこでは、工学的因果関係をはっきりさせる、科学的な対応が求められるのです。
ベテラン作業者に依存していたモノづくりを見える化できます。
その結果、コア技術の強みと弱みも整理されます。
現場で発生する不良品の原因究明は一筋縄ではいきません。
あらゆる可能性を想定します。
結局、現場の技術を知り尽くすことになります。
将来を語るために必要な、「今」を把握することになるのです。
3.工場の現場勤務時代の話
自動車部品を生産する工場に勤務していたときの話です。
その工場では週に3回、主に不良品を対象にした会議がありました。
不良品の原因分析 ⇒ 対策立案 ⇒ 対策実施 ⇒効果確認
不良品対策のPDCAをグルグル廻し続けていました。
こうした場に、スタッフや現場リーダー、ベテラン作業者、場合によっては設計担当者も集合です。
あらゆる視点から、不良の原因や対策について議論します。
現場の技術を知らねば話になりません。
嫌でも生産ラインの製造技術、生産技術のことが整理されていきます。
つまり、仕組みで学習する場が造られていたわけです。
本人が意識しなくても、自然とそうしてくれるのが仕組みのすごいところ。
不良品をフォロー・評価する会議を、当時、「フリョータイサク」と称していました。
定期的な「フリョータイサク」のおかげで、現場の技術をしゃぶりつくすことができたのです。
その結果、当時のコア技術の限界を理解できました。
すると、将来に目指すべき状態が見えてきました。
日々、不良品(不適合品)を相手にしていると、いやでも、何とかしたい!という気にさせられます。
そうした経験を経て、新技術開発プロジェクトをやり切れたことがあります。
全ては、現場の技術を知り尽くしていたからです。
「今」を把握できていたからです。
そうした段階になれば、”自然”と、次はこうしたことをやりたい!という状況に至ります。
技術屋とはそんな人種です。
他に負けたくないですから。
4.遠回りのようで確実なやり方
イノベーションへ至る技術開発をやり切るための魔法があると考えてはいけません。
コア技術の深耕・強化で即効性のあるやり方はありません。
(経営戦略上、M&Aというのはありますが、論点が異なるので、ここでは無視します。)
モノづくりは地道です。
そして、現場には、必ず強みとして蓄積されているノウハウがあります。
会社の大きい小さいに関わらず、そうです。
「今」を知るということは、こうした暗黙知に焦点を当てることでもあります。
モノづくりのキモとなる技能・ノウハウを見える化して現場で共有します。
こうした作業を進めるきっかけとして、不良品(不適合品)に注目するわけです。
「今」を知り尽くした若手人財が育ち、コア技術の深耕・強化を主導してくれます。
地道な作業の繰り返しで遠回りのようですが、確実に技術開発力を強化できます。
不良品(不適合品)をフォロー・評価する仕組みをつくりませんか?
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