管理技術を活かして外部と連携を図り、リーダーシップを発揮して付加価値を創出する、
と言う話です。
技術には固有技術と管理技術があります。
管理技術にも注目して付加価値を創出する戦略もあります。
1.固有技術を構成する固有技術と管理技術
モノづくりを事業展開する時、「コア技術」は欠かせない経営資源です。
そして、それは「固有技術」と「管理技術」の2つで構成されています。
一般的に「技術」と言う言葉から連想されるイメージは前者の固有技術です。
・「モノ」を提供するため、製品を造るのに必要な技術
・「コト」を提供するため、サービスを生むのに必要な技術
こうした技術が「固有技術」です。
製品やサービス、それ自体の魅力や価値は、これで決まります。
ただし、企業のモノづくりは固有技術のみでは成り立ちません。
気合一発!一回のみの製品やサービスの提供で終えるならば・・・・・。
それなら、固有技術のみで事業は成り立ちます。
しかし、企業の価値は存続・成長してこそ意味があります
事業の継続性が求められるのです。
そこで欠かせないのが、固有技術を”安定的に”、”継続的に”、生かす技術です。
アウトプット(=製品やサービス)を一定水準に維持する技術です。
具体例として、
生産管理、品質管理、原価管理、開発管理、人事管理、設備管理・・・・、
工場経営全般の管理技術が挙げられます。
したがって、固有技術と管理技術の両輪をバランスよく廻し続ける必要があるのです。
顧客へ提供する製品やサービスは見えるので固有技術は実感しやすいです。
一方、管理技術は、仕組みであり、システムとも称されます。
管理技術は、上手く事を運んでアタリマエという評価の中で培われます。
固有技術に比べて華々しさはないです。
地道な技術である分、実感はしにくいです。
管理技術はその会社の思考方法を表しています。
その会社、あるいはその工場での仕事のやり方そのものです。
ですから、管理技術は組織文化や組織風土と直結しています。
定着には時間が掛かります。
管理技術が、既に”仕組み”で構築されているならば、強みになっている可能性が大きいです。
属人的な要素が無く、効率良く仕事を進めるためのルールが出来上がっている状態です。
担当者の仕事のやり方が素晴らしい場合、
その担当者がいる限り、その仕事は上手くいくというケースがあります。
仕組みには至っていませんが、現時点でその仕事を効率よく進めることは可能です。
このケースでは、属人的な要素が排除されていません。
が、それを仕組み化すれば、独自の管理技術となります。
自社の現場に、強みとしての管理技術はありますか?
現場に仕組みとして定着していますか?
2.管理技術を強みとして外部との連携で付加価値拡大を狙う
特徴的な製品や技術を持つことが、付加価値創出の近道であることは間違いないです。
しかし、
全ての中小企業が独自の差別化された固有技術を有しているわけではないです。
工場が有している技術、技能は業界の平均レベルのときもあります。
固有技術では競合と競っている状況です。
固有技術に大きな特徴がない工場では付加価値創出戦略は不可能でしょうか?
そのようなことはありません。
こうした工場でも、その地域でモノづくり事業を継続してきたわけです。
事業が継続できている実績は何らかの強みが存在していることの証左です。
そのようなことは決してありません。
この場合、「管理技術」に注目します。
QCD+Dの切り口で、管理技術の分析です。
品質、原価、納期、そして、製品開発。
・品質クレームは、まず起こさないし、何かあったら要望に応えて迅速対応している。
・とにかく顧客要望の価格を実現する努力をしながら、しっかり利益も獲得している。
・突発の短納期にも対応し、しっかりと特急料金をいただいている。
・商品開発のセンスに恵まれ、毎年、地域でヒットする製品を販売できている。
こうしたことがあれば、もう十分です。
強みとしての管理技術をしっかり認識して一層強化します。
そうすれば、管理技術を生かして、次のような戦略が立てられます。
「狙いたい市場の新製品を開発できる固有技術を持った企業との連携戦略」
管理技術を強みにして、外部と連携するのです。
地域での連携です。
3.キーワードは一貫生産、責任、それとリーダーシップ
航空機産業は裾野が広く、今後の市場拡大が見込まれています。
(もうかり続ける工場経営は「飛行機」からも学ぶ)
その航空機産業へ参入をもくろむ中小企業が多いようです。
航空機メーカーも優秀なサプライヤーを求めています。
そうした中で、航空機産業へ新規参入を果たした中小企業の事例があります。
外部との「連携」によってです。
「ジャパン・エアロ・ネットワーク(JAN)」です。
大阪府や石川県、秋田県など約30社の中小企業で構成されています。
複数の企業が連携するクラスター化の取り組み事例です。
(出典:日経モノづくり2015年12月号)
JANでは、完成部品をティア1などへ納入しています。
機械加工から熱処理、表面処理などを各社で分担して一貫生産を実現しているのです。
当該クラスターのウリは、「一貫生産」です。
背景にはティア1、ティア2企業(三菱重工業、川崎重工業、住友精密工業)の戦略があります。
航空機の生産量増加に対応すために、外注比率を高めているのです。
工程毎に外注すると外注元となるティア1、ティア2企業では外注管理の負荷がドンドン増えます。
部品があっち行って、これは社内でやって、それから、また外注へ・・・。
のこぎり外注です。
部品の工程管理が複雑になってしまいます。
そのため、一貫生産できるサプライヤーを探しているティア1、ティア2企業が増えています。
目的は外注管理の負荷低減です。
まさに、JANは、外部環境の変化を機会と捉えています。
連携によるクラスター化で、補完し合いながら付加価値を創出した事例です。
成功させるためのポイントに「責任の所在をハッキリさせること」を上げています。
こうした連携で、問題が発生するのは、どのような状況になった場合でしょう?
品質、納期でトラブルが発生し、責任の所在が不明確なった場合です。
JANでは、特定の企業が中核企業となって、全体の責任を負います。
企業文化も企業風土も異なる会社同士が一緒に仕事をするわけです。
上手に連携するには工夫が必要です。
自社が有する独自の管理技術を生かします。
さらに、工場運営で欠かせない2つのコンセプトを生かします。
1)問題が発生するのは、現時点での”仕組み”が最適ではないからである。
2)問題は仕組みを通じて未然に防ぐものである。
こうした意識を持って事にあたれば、外部との連携も上手くいきます。
そもそも、社外を相手に、問題起きてから対応するのでは遅すぎます。
外部連携では、得意の管理技術を活かして、付加価値を創出できるのです。
こうした外部連携によるビジネスでは、管理者、経営者の負荷は増えます。
しかし、得られるコトやモノは大きいです。
それまで所有していなかった多くの経営資源を獲得できます。
そこで経営者が自らが手を上げ、外部連携で自らリーダーシップを発揮するのです。
多様な成果が期待できます。
信用、信頼、ブランド力などの無形の大きな財産も獲得できるのです。
外部連携を成功させるのに必要なもの、それは、リーダーシップです。
先頭に立って全体をまとめる企業経営者のリーダーシップです。
JANはそれを実現させつつある事例です。
JANで先頭にたっている企業は由良産商と高林製作所という企業です。
ちなみに、高林製作所は金沢に本社がある従業員数60名、
創業1936年のメーカーです。
こうした工場の現場のモチベーションは高いです。
まとめ。
コア技術には固有技術と管理技術がある。
管理技術にも注目して付加価値を創出する戦略もある。
管理技術を活かして外部と連携を図り、リーダーシップを発揮して付加価値を創出する。