戦略的工場経営ブログ元気でやる気のある若手を採用できているか?

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1.ファーストインプレッションの重要性

見知らぬ人の第一印象は10分の1秒で決まるそうです。プリンストン大学の心理学者であるアレクサンダー・トドロフ氏とジャニーン・ウィリス氏の研究によります。実験で明らかになりました。

・被験者に見知らぬ人の顔写真を10分の1秒見せた場合
・それよりも、もっと長い時間見せた場合

両者を比べても受ける印象は一緒だったのです。

そして、第一印象が出来上がってしまうと、それを覆すことはなかなか難しくなります。先入観や第一印象に引っ張られるからです。確証バイアス認知バイアスと言われています。思い込みです。

こうした思い込みが0.1秒で形成される社会科学的事実は知っておいていいことです。(出典:2022/2/23Discover Japan with BMW ファーストインプレッションの重要性とは)

2.メラビアンの法則

また第一印象に関してはメラビアンの法則があります。人の第一印象は顔の表情や身なり、声の大きさやトーンという視覚情報や聴覚情報でほとんど決まるという法則です。

交わされた会話内容から出てくる言語の第一印象形成への貢献度は7%程度と言われています。残りの9割以上は非言語です。言葉よりも、見た目、雰囲気、感覚で第一印象が決まります。

ということは工場に運んでくれる多くの人たちが抱く、我が社の印象もそうやって出来上がるのです。現場へ足を踏み込んで、目にしたことや肌で感じたいこと、そうした一見、つかみどころのない要因で我が社の第一印象が決まります。

そして、それは思い込みにつながり、容易に覆らないのです。お客様が抱いた第一印象が悪いと、商売上、明らかに不利です。留意しなければなりません。

3.魅力のある会社って?

あるご支援先の中堅、若手、数人で議論をしたことがあります。多くの中小製造現場で抱えている若手人材採用の問題についてです。

ここ数年、元気でやる気のある若手を採用できていません。近隣の大手にそうした人材を全て持っていかれると言うのです。

どうやったら我が社に元気でやる気のある若手がきてくれるだろうか?これがテーマです。

リーダー役の中堅従業員が「ウチに来てくれないのは、ひきつけるだけの魅力がないからだろうね。」と発言をしてくれました。それをきっかけに、魅力のある会社って?となってワイガヤです。

まずは高校や大学の学生に我が社を知ってもらうところからです。工場見学は具体手段となります。じゃどんな工場見学になれば、魅力を感じてもらえるだろう?となりました。先に挙げた第一印象の話がその場の議論を深めたようです。

ウチの現場の雰囲気って必ずしもイイ感じじゃないよね。1人ひとりが任された工作機械を稼働させることだけを気にしているから、なんか現場全体で一体とはなっていない感じがする。

二十歳若手の発言です。

肌感覚的に一人ひとりがバラバラで仕事をしていると感じていたのです。場合によっては仕事のやりにくさも感じます。ベテランにとってはそれが当たりまえだったのですが、21世紀生まれの若手には違和感がたっぷりです。

工場見学に来てくれる学生にそうした肌感覚的な判断を瞬時に下されることになりそうです。今の我が社の雰囲気では入社したいと考えないのでは?

プラスのオーラを醸成する環境に変えないと、元気でやる気のある若手獲得は絵にかいたモチに終わってしまいます。日頃の仕事のやりにくさを感じる原因についてを引き続きワイガヤしました

4.仕事のやりにくさを感じる原因とは?

先の若手は正直に「仕事のやりにくさも感じる」と言ってくれました。こうした問題点を素直に口にしてくれる若手がいる現場は救われます。

こうした問題点を口にするのもはばかられ、口を閉ざしてしまう現場の行き着くところは・・・・大手メーカーの経営者が頭を下げる場面を目にすることが増えてきました。品質不正を始めとした各種不祥事です。あってはならないことです。

臭いものには蓋をする体質、問題を起こしたら担当者を責める体質、幹部や管理者が現場へ丸投げする体質。こうした体質の企業が最終的に至るのが品質不正を始めとした各種不祥事です。

現場の若手が問題点を素直に語れない企業はそうなります。先の現場では今、若手を中心に改革を進められています。この現場は救われました。

米国クレアモント大学院大学の神経経済学者ポール・ザック教授は、組織の運営や企業の経営において特に重要なものは「信頼」であると指摘しています。

リーダーと従業員間の信頼関係が高い企業と低い企業で下記を比べました。
・ストレス
・生産性
・人生満足

信頼関係が高い企業は、全てにわたって低い企業を上回っていました。
ストレスは74%減
生産性は50%増
人生の満足度は29%増

「信頼」はオキシトニンという神経伝達物質の分泌を促すようです。そして、オキシトシンが分泌されると、人間は次のような効果を得られます。
・幸せな気分になる
・不安や恐怖心の軽減
・ストレス緩和
・他者への信頼が増し、絆を深めたいという想いが高まる
・学習意欲や記憶力の向上

などなど。
(出典:2021/04/22 ORGANIC DICTIONARY人間関係を良好に!愛情ホルモン「オキシトシン」の増やし方)

「信頼」はオキシトシン分泌を促進し、幸福感を高めるのです。ザック教授は、オキシトシンは共感力を高め、他人を信頼することへの恐怖心を除去してくれると説明しています。

仲間との信頼関係を築けばストレスが減り、生産性が高まるのです。そして人生満足度も向上するのですから、働くならこうした職場でありたいのは論を俟ちません。

「仕事のやりにくさを感じる」のは従業員同士の信頼関係がないからです。ストレスが高いから、余計なところにエネルギーを費やすことになります。それで若手も疲れるのです。当然、生産性が劣化します。そうした会社を魅力的であると感じる従業員はいません。

5.人と人との関係性が大切

ザック教授によると、職場で信頼関係を醸成し「オキシトシン」を分泌する具体例は下記です。
・中も働きや努力を認める
・難しいけれど達成可能な挑戦を与え適度なストレスを誘発する
・仕事のやり方について自主裁量権を与える
・自分でやりたいと思う仕事ができるようにする
・広く情報を共有する
・意識的に関係性を強化する
・人格的な成長を促す
・リーダーが弱さを認め仲間に助けを乞う

これらは「個」ではできないことです。全て「チーム」が前提になっています。人と人との関係性が前提です。チームが機能していれば、信頼関係が醸成されます。

ストレスが低く、応受援性が高い職場なので、仕事のやりにくさを感じることはありません。雰囲気がイイ現場ではチームが機能しています。魅力的な企業はワンチームです。連携、連動が機能しやすいので生産性が高まります。成果がでるのでチームはますます雰囲気は良くなるのです。

ワンチームはサイコロジカルセーフティー(心理的安全性)の考え方に通じます。対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だという信念が共有されている状況です。創造的な成果を生み出すチームに必要なことと言われています。

創造的な成果を得るには試行錯誤が欠かせません。失敗もあります。価値観の違いからくる意見の衝突もあるでしょう。それでも建設的な議論が可能なのです。

サイコロジカルセーフティー(心理的安全性)が前提にあればそうなります。ザック教授の言う信頼関係と言い換えられるかもしれません。人と人との関係性が大切と言うことです。魅力的な会社は関係性の大切さを理解している人たちの集まりでもあります。「自分さえよければ」はありません。

6.戦略的コミュニケーション

ザック教授は職場で信頼関係を醸成し「オキシトシン」を分泌する具体例のひとつとして、「意識的に関係性を強化する」を挙げています。

経営者にとっての従業員は極言すれば「赤の他人」。そうした「赤の他人」同志を強固な絆で結び付け、最強のチームにしなければなりません。経営者から現場へ意図的な働きかけが必要です。

趣味や同好会でもない限り、自然発生的にチームが出来上がるわけがないのです。信頼を生み出すためにコミュニケーションを設定する必要があります。意識的に、です。

弊社もご支援でお伝えしているのが戦略的コミュニケーションです。現場でのやり取りを活発化するため、意図的にコミュニケーションを設定しなければなりません。

自然発生的に現場での意見交換が活発になることはないのです。毎朝の工程会議、現場での朝礼や昼礼、週一の改善会議、月一の生産会議など、仕事として公にコミュニケーションをとる場を設定するのです。経営者は関係性を強化する目的で戦略的に会話を交わす場を設定します。

仕事でのコミュニケーションをとる場が設定されていない現場で、本来、指導役であるべきベテランが、陰でこそこそ、誹謗中傷を発していたという事例もありました。組織が本来持つべきコミュニケーション能力に欠陥があり、関係性を大切にできない職場の行く末です。

魅力的な会社の真逆です。就職先として若い人材に選ばれるはずがありません。

信頼関係から醸成される雰囲気を肌感覚で感じてもらえば、イイ第一印象を若手に受け取ってもらえます。魅力的な会社だなぁと考えてくれる確度が高まるのです。

信頼関係に裏付けられたチームに所属しているメンバは溌溂とした表情で仕事をします。その様子を見れば一瞬で理解してもらえるでしょう。

現場の作業者から笑顔で「ウチの現場においでよ!」と声を掛けられて、高校や大学の若者が貴社の現場にマイナスの印象を抱くことは絶対にありません。

魅力的な会社は結局、従業員一人ひとりがつくるものです。経営者が「ウチは魅力的だ~ぁ」と主張するだけではできません。従業員が「ウチの会社はイイ会社だよなぁ~」とさりげなく発する言葉が大事です。信頼関係のある職場なら、そうした言葉が自然と出てきます。

貴社はどうですか?

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