戦略的工場経営ブログ生き残るにはチームで仕事をするしかない

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1.日本の平均賃金は先進7か国で6番目

OCEDデータによると、2020年、各国の平均賃金は下記です。(単位は米ドル)

アメリカ   69,392

カナダ    55,342

ドイツ    53,745

OECD全体  49,165

イギリス   47,147

フランス   45,581

韓国     41,960

日本     38,515

イタリア   37,769

スペイン   37,922

(出典:https://www.oecd.org/tokyo/statistics/average-wages-japanese-version.htm

計算の根拠は次のように説明されています。

「国民経済計算に基づく賃金総額を、経済全体の平均雇用者数で割り、全雇用者の週平均労働時間に対するフルタイム雇用者1人当たりの週平均労働時間の割合を掛けることで得られます。この指標は、2020年を基準年とする米ドルと購買力平価(PPP)で表記されます。」

したがって、各国、正社員の平均賃金と考えられそうです。日本の平均賃金は円換算(1ドル=125円)で480万円となります。

日本は先進7か国中、イタリアに次いで下から6番です。アメリカの55%程度に留まります。気が付いたら、お隣の韓国には、すでに抜かれていました。日本の低労働生産性は多方面から指摘されていますが、この賃金データはそのことを裏付けています。

国内に身を置いているとグローバルでの格差を感じることはありません。しかし、状況は劣後の一途、グローバルで平均賃金はお世辞にも高いとは言えなくなりました。韓国に抜かれたので、「アジアでは最も高くて・・・」とも言えなくなったわけです。なんとも冴えません。

2.失われた30年

1991年時点の各国、平均賃金データも並べて、30年間の伸び率を比べます。数値の内訳は「1991年平均賃金→2020年平均賃金 増加分 伸び率」です。(単位は米ドル)

アメリカ 46,677→69,392  22,715  49%

カナダ  40,283→55,342  15,059    37%

ドイツ  39,951→53,745  13,794  35%

イギリス 31,839→47,147  15,419  48%

フランス 34,728→45,581  10,853  31%

韓国   23,269→41,960  18,691  80%

日本   36,896→38,515  1,619   4%

スペイン 36,770→37,922  1,152   3%

イタリア 38,050→37,769  ▲281   ▲1%

(出典:先のデータから筆者作成)

90年代以降の30年での、イタリアと日本を除く、先進7か国の平均賃金伸び率が30%~50%であるのに対して、日本は4%です。平均賃金の増分も先進諸国よりも1桁少なくなっています。なんたる低迷ぶりでしょうか。低すぎです。何かが間違っています。

お隣の韓国は80%の伸び率で日本を超えました。追いつけ追い越せという意識を持ったがむしゃらの国には勢いがあるようです。韓国はここ10年で輸出国に変わりました。

一方、日本はサービス業(第三次産業)が中心の国に変わったわけですが、問題はその生産性が低いことです。加えて、新型コロナウィスル感染拡大対策として実施されたインバウンド需要を制限する政策により生産性がますます低下する懸念もあります。

そして円安が生産性低下を助長しそうです

日本は90年代以降、豊かに成長することなく、グローバルには、ほとんど横ばいでした。失われた30年です。特に2000年以降、日本では、豊かさを感じることが少なくなっています。豊かさとは絶対値の多寡よりも成長率の高低で感じるものです。

日本は、他の先進国と比べて賃金の絶対値が少ないだけでなく、成長率も低い状況にあります。

3.生産性を高める仕事のやり方に変えなければならない

日本が生み出す付加価値額の半分、就業者数の70%、企業数の99%が中小企業です。したがって、失われた30年の影響を思いっきり受けたのは中小企業と言えます。ただ、逆もまた真なりです。

企業数の99%を占める中小企業に所属する従業員の仕事ぶりが問題だったので低生産性、低賃金に至ったのかもしれない・・・・・。

私達の仕事ぶりが、付加価値額を積み上げるのに貢献できていなかったのではないかということです。全就業者の70%を占めている中小従業員の国内経済全体への影響は小さくありません。

「少しでも多くの給料を払ってあげたい。」

弊社ご支援先の多くの経営者が語ってくれることです。弊社はその経営者の願望実現の支援をしています。そのためには付加価値額を積み上げなければなりません。人時生産性を高めるようにして積み上げます。

したがって、もし、仕事のやり方が、効率的に付加価値額を積み上げるやり方になっていなかったら、それを変えなければならないのです。そうしないと、賃金はいつまでたっても、横ばいか増えても数パーセントのまま。

そうでなくても、私たちは、今、少子化、人口減少など回避できない社会問題に直面しています。淡々と従来のやり方を続けても、賃金を上げられるわけはないのです。経営者の強い意志を持って、上げようとしなければ、絶対に上がりません。

個の力で乗り切るのでは、もう無理です。中小製造企業が生き残るには、製販一体、全員一丸しかありません。チーム力です。

チームの力に焦点を当てなければなりません。ベテランも若手も、自分はどんな貢献できるかを真剣に考えなければならないのです。やりたくないとか、やれないという水準の話ではなく、やらなければなりません。

経営者からの指示はいわば連合艦隊司令長官の命令と同じです。やらなければ生き残れないのです。無理を承知で目標を設定した経営者の強烈な意志や意図が込められます。

やれることなら早速やり、やれないことならやれるようにする。

以外、選択はありません。

選択がないからベクトルが揃います。背水の陣で火事場の馬鹿力が発揮されるのは、退路が断たれているからです。後は正面突破しかないと全員の理解が一致するからです。

死に物狂いが奇跡を起こします。個の力では絶対にできません。チームの力が発揮されるからこそ、スケールの大きな奇跡が起きるのです。

全ては経営者の強烈な意志や意図が込められた指示の有無次第です。賃金アップも人時生産性向上次第です。

4.現場に経営者の強烈な意志や意図が伝わっているか?

そもそも、現場に経営者の強烈な意志や意図が伝わっているか?それがなければ、はじまりません。個の力がとか、チーム力がとか、以前の話になります。

90年代、国内製造業の労働生産性はOECD諸国でもトップクラスでしたが、その後の20年で劣後しました。日本の製造業労働生産性の国際順位(上位20か国)推移は下記です

95年  1位

00年  1位

05年  9位

10年  10位

15年  17位

19年  18位

その結果、平均賃金も先進7カ国中で6番目、アメリカのほぼほぼ半分に留まっています。さらには韓国にも抜かれ、アジアの盟主とは言えない状況です。

問題があれば必ず原因があります。他国と比べれば、原因は明らかです。とにかく、付加価値額の人時生産性が低いのです。分子をドンドン積み上げなければなりません。

人時生産性が低いとは、持っている工数の割には積み上げる付加価値額が小さい状況を言います。詰めて、空けて、取り込みます。リードタイムを短縮して、新たな仕事をこなすのです。人時生産性が高まります。

詰めて、空けて、取り込むぞ~。

リードタイムを短縮するぞ~

手離れのイイ仕事のやり方に変えるぞ~

現場にこのような経営者の強烈な意志や意図が伝わっていないと、現場は納期だけを守っていれば問題はないだろうという思考回路のままです。

属人的な仕事のやり方のままで、従来と変わりません。「チームで仕事をする新たなやり方に変わらければ」と気付かせるのは経営者の仕事です。

振り返って間違ったことに気付いたのならそれを変えればイイのです。思いったら吉日です。想いを抱いた経営者はすぐに行動されています。

経営者が現場と一緒になって、「今、忙しいので、落ち着いてから、賃金アッププロジェクトをやろう。」と考えているうちは、改革が始まることはありません。本気と覚悟がないからです。

5.チームを機能させたい

経営者は忙しいのが普通です。したがって、忙しいを理由にやらないのは、本気とが覚悟がないからで、やらない理由を語っているのにすぎません。

とは言っても、忙しい経営者が一人で改革ができるわけがないのも事実です。やっても長続きしないよなぁ~との本音も漏れ出てきます。しっかり準備してからプロジェクトをやらなければならないと考えがちです。その結果、先延ばししてしまう・・・・。

一生懸命にやる経営者ほど、こうした思考回路にも陥ります。ここで発想の転換をしたいのです。忙しいからこそ、プロジェクトでチームの力を引き出します。

それまでは個々の力でやっていたかもしれません。忙しいと言い始めると、それ以上にはならないのです。1+1=2であり、それ以上は求められないのです。人に仕事がついていることが多いので、相乗効果も期待できません。

忙しいからこそ、相乗効果を期待できるチームで仕事をするやり方を現場に体感させます。それがプレジェクトです。仕事に人をつけるやり方を知ってもらいます。

個の力で仕事をしている限りは成長も頭打ちです。人に仕事がぶら下がっているままではチーム力を発揮できません。だから仕事に人をあてがうのです。

製造業は工程で仕事をやります。工程とは儲かる工場経営を構成する仕事の単位です。チーム力が発揮できます。スポーツで言うところのポジションです。

スポーツのポジションはチームを機能させるためにあります。分担をこなす一方、チームの勝利に貢献するという最大の役割を果たすためのものです。チームとは役割を果たすために分担をこなす仕組みと言えます。

貴社ではチームの力で仕事をしていますか?

チームが機能させる3要因を思い出す必要があります。

共通の目標

コミュニケーション

貢献意欲

人時生産性向上が共通の目標です。給料アップにつながります。給料アップが目標になるならベクトルが揃いやすくなるかもしれません。今一度、製販一体、全社一丸、チームの力を引き出すことを考えたいのです。

賃金を上げる←人時生産性向上←リードタイム短縮←チームの力

賃金アップもチームの力次第です。経営者が外からもぎ取ってきた新たな仕事をドンドンこなせば儲かる体質に変わります。生き残るにはチームで仕事をするしかありません。

そのように変わらない限り経営者の願望を実現できない時代になりました。削減の時代から積み上げの時代です。失われた30年を踏まえて、改革に挑戦するのです。

グローバルに日本の平均賃金も生産性も大きく劣後しているのは何かが間違っているからです。間違っているのなら、変えなければなりません。個の力からチームの力へ。

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