戦略的工場経営ブログ次世代経営者は〇〇で従業員を導く

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1.創業者と2代目経営者の役割は違う

創業者と2代目経営者の役割は違います。創業者はゼロイチです。ゼロから事業をスタートさせます。試行錯誤の連続です。創業者も経験がないのでやってみないとわかりません。トライアンドエラーを重ねて事業基盤を作り上げていきます。

弊社がご支援している経営者の方々から、創業者の仕事振り伺うことがあります。弊社がご支援している経営者の多くが2代、3代目の方々です。2代目、3代目経営者はその経営基盤を受け継ぎ事業を発展させます。

先代から事業を受け継ごうとしている、ある中堅製造企業の次世代経営者が新たな経営方針を模索しているときの話です。

「何か説得力があります。」

先代の仕事ぶりをそのように表現していました。先代は創業者です。それほど遠くない将来、先代から事業を引き継ぐ計画があります。

従業員をどのように導こうかと悩んでいる次世代経営者です。どうしても先代の仕事ぶりが目に浮かびます。仕事ぶりの判断基準が先代経営者のそれになってしまうのです。

話を伺うと、先の次世代経営者の悩みは「先代と同じことができない」に行き着きます。経営者の仕事ぶりを比較する対象を他に持っていないので仕方がありません。

「同じやり方をしなくてもいいのではないですか?」創業者と2代目経営者の役割が違うことをお伝えしながら議論を進めているところです。

2.創業者ならではのやり方を真似なくてもいい理由

創業者には創業者にしか持ち得ない圧倒的なエネルギーがあります。0→1。何もないところから自らの才覚で事業を立ち上げるのが創業者です。

起業した中小製造企業の10年後生存率は25%程度(中小企業白書2006年版)、4社に1社しか残りません。中小製造企業は、実質1日3社ずつ減っているとも言われています。確固たる信念がなければ事業を継続できないのです。創業者が波乱の立ち上げ時をやり切ったので今日があります。

創業者の多くは背中で従業員を引っ張ります。創業時の規模は小さいです。仕事では喧々諤々、ああでもないこうでもないとの会話が飛び交っています。トライアンドエラーの連続なので、従業員は経営者のやり方に従います。経営者のパワーが会社全体を包み込んでいる状態です。

仕事上の活発なコミュニケーションがある一方で、阿吽の呼吸も生まれます。経営者が特別に語らなくても、従業員一人ひとりにやらなければならないことが伝わるのです。現場は自分に期待されている役割を悟ります。創業者の背中を見ていれば何かが伝わってくるからです。

従業員は、方針書や経営計画書、ロードマップの類いがなくても、経営者の意志や意図が理解できています。経営者の背中が方針書や経営計画書、ロードマップそのものです。

創業時は変化、変化、変化です。そもそも決まった方針や計画を立てようがありません。0→1ステージでは重要度も緊急度も高い仕事ばかりです。四の五の言っている暇があったら行動せよ!従業員はこんな雰囲気で経営者と過ごします。

創業者はその仕事振りで少数精鋭のチームを機能させるのです。背中が求心力の源です。

(1)共通の目標を持ち、(2)公私にわたるコミュニケーションを深めて、(3)チームのために貢献したい気持ちを起こさせることこれがチーム活性化の3要素と言われています。

創業者は背中や仕事ぶりを通じて3要素実践しているのです。

創業者ならではのやり方を真似なくてもいい理由はここにあります。結局、経営者がやりたいことは少数精鋭のチームを機能させることだからです。それは創業時も、今も同じです。チームを機能させるやり方はいろいろあります。

3.言語化と数値化で現場を導く

創業者と2代目経営者の役割は違います。次世代経営者の仕事は創業者や先代が築いた経営基盤を成長発展させることです。下記で少数精鋭のチームを機能させます。
・言語化と数値化
・言葉
・数字

2代目経営者は言語化と数値化を駆使して自身の意志や意図を従業員に浸透させ、少数精鋭のチームその気にさせるのです。そうやってベクトルを揃えます。

創業時の混沌とした時期を経て事業基盤が出来上がりました。これまではチャレンジャーだったかもしれません。これからは競合も出てくるので防衛戦も必要です。将来の収益を設計する必要もあります。先立つものがなければ成長発展も絵にかいた餅です。

事業を成長発展させる仕事のやり方は創業時と異なります。

ベンチャー企業のはしりであるホンダが事業を成長発展させる段階で仕事のやり方を変えたのは有名な話です。本田宗一郎は藤沢武夫との共同マネジメントに切り替えました。本田技研工業がグローバルに飛躍する直前の話です。藤沢武夫は創業者と違う役どころをこなしました。

弊社がご支援する経営者へ、方針書や経営計画書、ロードマップの活用をお薦めしているのは、経営者の意志や意図を言語化と数値化で従業員へ浸透させたいと考えるからです。

多くの中小製造企業経営者は創業者や先代から事業を引き継ぐ役割を担っています。弊社がご支援する経営者もご多分に漏れません。引き継いだ事業基盤を成長発展させるステージです。

計画や判断基準、収益構造などなど経営判断のツールが必要です。特に将来へ向けた時間軸の設定は最重要課題になったりします。従来とは違う観点も必要です。

経営者ご自身が考えるためにも、意志や意図を言語化と数値化しなければなりません。考えるとは比べることです。言語化と数値化でそれをやります。成長発展のために、新しい仕事のやり方を考えるのが次世代経営者の役割です。

・創業者は背中で従業員を導く

・2代目は言葉と数字で従業員を導く

4.擦り合わせ式

商品の構造に関する2つの考え方があります。モジュラー型とインテグラル型です。

事前に部品の組み合わせ方のルールを決めて、そのルールに従ってつくられた部品をブロックのように組み合わせるのがモジュラー型です。一方、インテグラル型では、事前に組み合わせ方のルールを完全には決めず、全体の最適性を考えて各部品間の調整を行いながら造りこんでいきます。

前者の代表的な製品はパソコン、後者は自動車です。そして日本のモノづくりの強みはインテグラル型の仕事にあるとされています。擦り合わせ式の仕事です。これは少数精鋭の中小現場での仕事のやり方にも応用できる考え方です。

中小製造企業の強みは機動性、小回り性、柔軟性です。緩やかなルールのなかで変幻自在にやり方を変えながらお客様の要望に応えます。緩やかなルールであっても、いざというとき、ベクトルは揃わなければなりません。

そこで計画や判断基準、収益構造などを従業員へ見せながら従業員を導くのです。創業者や先代から事業を引き継ぐ次世代経営者は言語化と数値化で事業を成長発展させます。

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