戦略的工場経営ブログインプットを減らす生産性向上で成果を生かすやり方
時間単位で余剰の経営資源を生かしていますか?
1.余剰が1人分以下のとき
生産性向上の結果、得られた成果がどのように利益へ貢献するのか事前に明らかにすることは、現場のやる気を引き出すためには欠かせないことです。有能性の実感につなげます。
セミナーでは、生産性向上の3つの視点と利益につなげる、その具体的なやり方を説明しています。利益への貢献度は現場で有能性を感じるきっかけとなるので、特に重要視しているのです。
生産性向上の成果物にはいくつかありますが、その中も工数、特に人時(man-hour)は、しっかり把握されなければなりません。
なぜなら、経営者が生産性向上の成果を時間単位で把握していないと、成果が付加価値額を加えることに繋がらない懸念があるからです。
作業者が5人必要な生産ラインを想定します。生産性向上活動で、4人で操業できるようになりました。生産性向上で、作業が1名余剰となります。
この場合、作業者1名が丸々空きますから、経営者は1名に新たな業務を指示したくなるはずです。その作業者に、付加価値額を積み上げる業務をやらせることでしょう。
人単位の生産性向上ならば、余剰となった人材をどう生かすか、経営者は考えるはずです。一日中、余剰となった人材を遊ばせておくことはしません。
では、生産性向上活動で4.7人で操業できるようになった場合を考えます。この場合、生産性向上で0.3名余剰です。余剰が作業者1名分まではありません。
半日以上は従来通り、現場での作業があります。
この場合、成果を時間単位で把握し、生み出した余剰の使い方を時間単位で決めていないと、せっかく生み出した経営資源を生かせません。
余剰時間の使い方の指示を受けていない現場では清掃に使う程度になってしまいます。
これでは、せっかくの生産性向上も付加価値額増に繋がりません。生みだした余剰の経営資源が、なんとなく現場の作業に費やされ、それが定常化してしまいます。
2.時間単位で考える
時間単位で付加価値増を生かす仕事は、全体最適化の視点を持つ経営者にしか考えられないことです。経営者は常にリーダーや作業者の業務内容を時間単位で把握する必要があります。
そこで、始めて生産性向上活動の結果、生み出せる余剰時間が明らかになるのです。誰から余剰時間を生み出せるかも見えます。
生み出した余剰工数の生かし方を事前に決めておかなければ、余剰時間を生み出した作業者が遊ぶことになります。
例えば、付加価値額を積み上げる仕事ととして、試作・開発業務を想定した場合、誰にそれをやらせるか、そのためにどの程度、生産性を高めるのかを事前に決めておかねばなりません。
生産性向上の成果物が工数である場合、下記の2点が重要です。
1)現場の現場リーダー、作業者の業務内容を時間単位で把握しておく。
2)生産性向上で余剰となった時間の活かし方を事前に決める。
現場リーダー、作業者の作業内容を時間で把握していることが必要です。生産性向上で余剰となった時間を生かし、付加価値額を高める仕事へつなげる前提条件となります。
3.単価アップのための取り組み
付加価値額を高める効果的な方法は単価を上げることです。しかし、そう簡単に単価を上げる方法はありません。単価を上げても顧客から選ばれるための製品や技術が必要です。
下請け型を脱却し、独自の製品を手にしたければ、会社の規模のかかわらず、継続的な研究開発を定着させます。
こうした活動を専門でやらせられるチームを持てる企業は問題ありませんが、経営資源に制約がある中小製造企業が全て開発部門を持てるわけではありません。
だから、生産性向上活動を通じて、その経営資源をひねり出します。そうしたモノづくり戦略を立案するのです。
需要が十分にあり、造れば売れる時代なら、アウトプットを増やす生産性向上により、黙っていても付加価値額は増えます。しかし、昨今は状況が変わりました。
黙っていては受注は舞い込みません。意図して付加価値額を積み上げる活動をしなければ企業の命脈を保てないのです。
単価を上げてもお客様に選ばれる商品、製品、サービスを生み出さない限り、中小製造現場も生き残れません。インプットを減らして生み出した余剰の人、時間をの使い方が問われます。
将来、単価アップしたいと考えるなら、まさにそうです。こうした考え方を全社で共有することは現場に経営者の想いを伝えることにもなります。
経営者は、将来的な単価アップを目的とした研究開発を推進するのに必要な経営資源を生み出したいと考えている。そこで、そのための経営資源を生むことが現場活動の目的である、ついては現場活動で成果を出してほしい。
このように具体的に、明確に、目的が示されれば、現場のやる気が引き出されます。
大きな目的は現場力を呼び起こすのです。
また、生産性向上活動で大きな成果を得たかったら、業務や工程の統合も考えます。
分離され、離れた場所に設置された工程Aと工程Bで、それぞれ0.5人分の工数が削減されたとしても、人としては1人も削減はできません。
0.5人分と言えども1人は1人です。
そこで、工程Aと工程Bを統合したうえで、生産性を高めたなら、0.5+0.5=1.0人で1人分の工数削減になる可能があります。
いずれにせよ、これからの生産性向上では、将来的な単価アップを目的とした研究開発を推進するのに必要な経営資源を生み出す視点も必要となります。
そのため、現状の現場リーダー、作業者の業務内容を時間単位で把握すること、そして、生産性向上で獲得できた工数の活かし方を事前に決めておくことです。
現場活動の目的を明らかにすることが、現場の動機づけに繋がることも忘れてはなりません。
経営者の唯一の関心ごとは利益なのですから自分たちの頑張りが、利益へどうつながっているのか伝えることで、貢献度を実感させることができます。
これは、現場からやる気を引き出す上で、欠かせない視点です。
時間単位で余剰の経営資源を付加価値額増へ生かす仕組みをつくりませんか?