戦略的工場経営ブログ付加価値額生産性で経営者の想いを伝える

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経営者の想いを現場へ浸透させるのに、付加価値額生産性を活用していますか?

1.生産の3要素と生産の3M

生産要素である素材など低い価値の経済財を投入して、より高い価値の財に返還する行為又は活動。

(出典:生産管理用語辞典 日本規格協会)

上記は「生産」の定義です。

私たちは、モノづくりの事業を通じて「価値」を顧客へ届けています。手段は有形でも無形でも構いません。製造業でも、サービスを提供することが大切であると言われて久しいです。

顧客が「価値」を感じてくれることを目指します。

いずれにせよ、低い価値の経済財に価値を加えること、つまり付加価値を創出することが私たちの仕事です。そうして、豊かに成長するための源泉として利益を獲得します。経営者にとっての豊かな成長とは利益アップと給料アップの実現です。

製造業で生み出す付加価値は3つの要素に展開されます。

生産の3要素と呼ばれるQCDです。

Q(quality)

C(cost)

D (delivery)

成果としての付加価値は、これら3つで計測できます。

ですから、顧客へ届ける価値の本質はこれら3つです。

さらに目標通りの水準で生み出すために、投入要素として生産の3Mをコントロールします。

人(man)

機械(machine)

材料(material)

この3つに、方法、お金、管理、市場などが加わって、4M、5M、6Mと呼ばれこともあります。ここでは、利益に直結する要素に絞りたいので、3Mとします。

生産の3Mを投入して、価値あるものへ変換し、生産3要素QCDを生み出す。

これが生産活動です。

さて、経営者の関心事は利益を生み出すこと、その延長線上で従業員の給料を増やすことにあります。利益が豊かに成長するための源泉です。

イケイケどんどんの時代は過ぎ、削減の時代から積み上げの時代に変わりました。黙っていても受注が舞い込む時代は過去のものです。意図して積み上げなければ売上高も維持できません。

また、コモディティ化の進んだ製品では、売り上げを増やしても、利益が積み上がりにくい状況になっています。いかに利益を獲得するか、利益を獲得する手段の優劣が、企業の命脈を決定する時代となりました。

利益を獲得する姿勢を明確に打ち出す必要があります。

利益を獲得して、将来へつなげたい。

こうした想いを現場へ伝えるのが利益計画です。

具体的には、利益計画で目標売上高と目標利益を現場へ示します。

ただ、この数値では、現場に実感を持たせること、つまり日常の生産活動と紐づけることが難しいと感じませんか?

経営者の掲げた目標売上高や目標利益を目にして、現場は考えます。

「なるほど、うちの社長は売上も利益も伸ばすことを考えているのだな。成長することはいいことだし、給料も増えるかもしれない。がんばらねば」

具体的な目標を掲げることは間違っていませんし、現場のやる気を引き出すきっかけになります。

現場はだれでも、自分の職場をよくしたいと考えているからです。

しかし、現場は、掲げられた目標に対して、今一つ実感がわきません。

目標売上高や目標利益は、全社活動の結果であり、自分たちの生産活動に特化した指標ではないからです。そこで、着目する数値があります。

付加価値額です。

付加価値額を活用して、経営者の想いを現場へ浸透させます。

2.付加価値額生産性

経営者は、付加価値額生産性を通じて、現場に利益の積み上げを実感させるのです。

一人当たり、あるいは時間当たりの付加価値額が、いわゆる儲ける駆動力となっていることを説明します。製品1個当たりの付加価値額は、次のように定義されます。

 ◎製品1個当たりの付加価値額 = 単価 - 製品1個あたりの変動費 

変動費は材料費、外注費などです。生産数量に比例して増える費用と考えます。投入要素である生産の3Mを反映しています。つまり現場でコントロールできる数値です。

そして、付加価値額の総計は、全ての製品の付加価値額を総計したものです。

 ◎付加価値額総計=Σ(製品1個当たりの付加価値額 × 販売数量)

そして、固定費から付加価値額総計を引き算すれば利益が出ます。

 ◎利益 = 付加価値額総計 - 固定費

したがって、現場は、次の3つのどれかに寄与すれば、利益へ貢献できるのです。

1)単価を上げる

2)変動費のムダを減らす

3)販売数量を増やす

効率良く付加価値額を生み出すこと、付加価値額生産性を高めるのが現場の仕事です。

また、付加価値額を導入すると、固定費に焦点が当たります。付加価値額から固定費を引き算すると利益だからです。付加価値額で固定費を回収する利益構造も理解できます。製品ごとの付加価値額を積み上げ、固定費を回収し、その後に利益が生み出されるのです。

また、積み上げられた付加価値額を人員数で除した数値が一人当たりの付加価値額です。一人当たりの付加価値額に自分の給料が含まれています。付加価値額生産性は誰もが増やしたい数値です。

そして、これは利益に直結しています。

「まずは、毎月、自分の給料分を稼がないといけないわけですね。」

ある職場の若手の現場リーダーがこう言っていたことがあります。その通りです。

生産の3要素QCDは、生産活動の成果であり、売上高や利益につながっています。そして、所定のQCDを生み出すために、現場で、生産の3Mをコントロールするのです。

その両者を結び付けているのが、付加価値額であり、付加価値額生産性です。

生産の3M→付加価値額生産性→生産の3要素→利益。

この関係性を現場に教えるのです。

利益を獲得したい経営者は、付加価値額生産性で想いを現場へ伝えます。

付加価値額生産性で利益を評価する仕組みをつくりませんか?

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