戦略的工場経営ブログ「なくする」ことに焦点をあてて現場を観察する
人時生産性向上の論点がはっきりしていますか?
1.儲かる改善活動のテーマ選定は経営者の仕事
儲かる工場経営で経営者が気にする唯一の数字は「アウトプット」です。
「アウトプット」が利益に直結します。
生産活動の効率を高めるために、生産性向上に焦点をあてる現場は多いです。
その対応に間違いはありません。
しかし、生産性向上自体が目的化してしまっては、進むべき方向を誤ります。
あくまで、経営者がこだわるべきものは、利益につながる「アウトプット」です。
利益につながらない生産性向上もなることに注視しなければなりません。
さらに、生産性を高めても、成果が利益につながらなければ、仕事のやりがいを感じられません。
現場が自律性を発揮する以前の話になります。
あくまで、経営者が目指すのは「アウトプット」の最大化です。
そこで、経営者は次式に基づいて「アウトプット」の最大化を図ります。
「アウトプット」= 生産性 × 「インプット」 (※)
「インプット」は貴社が投入できる経営資源です。
(※)式によれば、「アウトプット」最大化の方法は、2つあることが分かります。
①生産性を高める
②「インプット」を増やす
中小製造現場が置かれている経営環境を勘案すると、②で対応できることは少ないです。
②では、現場の人員を増やす、残業時間を増やす、などが対応策になります。
市場がどんどん拡大しているときなら、現場の人員を増やし、生産量増を狙う戦略があり得ました。
生産量をふやして利益を増やす戦略です。
しかし、昨今の多くの中小現場が直面しているのは、市場の成熟化、多品種化、高付加価値化です。
工数を増やして、単純に生産量を増やし、増益を狙うことは、現実的な対応ではありません。
そもそも、少子化にともない、人財を確保することが困難になってきています。
人手不足が経営問題になっている現場も多数です。
さらに、その人手不足解消のため、残業増で乗り切るのも、恒久策としてはあり得ません。
働き方改革が求められる経営環境下で、中小現場も社会的責任を果たす必要があります。
したがって中小現場で「アウトプット」を増やすのに、考えるべきことは生産性向上です。
改善活動の目的に掲げられる生産性向上は、あくまで、利益につながるアウトプットを増やす手段です。アウトプット増に貢献しない生産性向上で、汗をかいても利益につながりません。
儲かる改善活動にならないのです。
改善活動の狙いが利益であるならば、生産性向上と利益との因果関係を明確にする必要があります。
改善活動の目標は生産性向上です。
利益につながる「アウトプット」増に貢献する生産性を高めるのです。
改善活動は、経営問題を解決する手段と考え、生産性向上に注目します。
ですから、儲かる改善活動のテーマ選定は経営者にしかできないのです。
2.改善活動上の着眼点は「なくすること」
改善や効率化の着眼点として「ECRS」があります。
4つの着眼点です。
eliminate:なくせないか
combine:いっしょにできないか
rearrange:変えられないか
simplify:簡単にできないか
4つの視点で現場を観察すると改善点が見えてきます。
着眼点を4つで表現していますが、最終的に着眼点は1つに絞られます。
それは、1番目の「eliminate:なくせないか」です。
改善活動の目的は、「eliminate:なくせないか」に帰結されることに注目します。
現場改善の目的は、あらゆる生産活動の効率を高め、生産性を向上させることです。
トヨタ生産方式では7つのムダを挙げています。
1)つくりすぎのムダ
2)手待ちのムダ
3)運搬のムダ
4)加工そのもののムダ
5)在庫のムダ
6)動作のムダ
7)不良をつくるムダ
こうしたムダを「なくせないか」と考えるのです。
AとBをいっしょにして工程を1つなくせないか。
CとDの工程を逆にして特定の作業をなくせないか。
Eの工程を簡単にして作業の手間をなせないか。
そもそも、それをなくせないか、です。
つまり「なくする」という着眼点で現場を見るのです。
現場では多種多様な業務がなされています。
貴社が事業を継続してきた中で、必要に迫られて、やらねばならなくなった作業がたくさんあるでしょう。付加価値を加えるのに貢献していない作業があることにも、気付いているかもしれません。
こうした作業や仕事をなくせないかと考えます。
「なくする」ことは、少ない経営資源でも、従来と同じ「アウトプット」を獲得することにつながります。現場の効率アップ、生産性の向上です。余力が増えます。
こうした活動を通じて、少数精鋭で筋肉質の現場をつくることになるのです。
生産性を高めるために、まず、「なくする」ことに焦点をあてて現場を観察して下さい。
現場力を高めることにつながります。
「なくする」ことに焦点を当てた改善活動を展開しませんか?