貴社の製品は、過不足なく顧客の要望に応えていますか?
顧客に選ばれる製品を造らなければ、収益を確保できません。
売れない製品を対象に、一生懸命にコスト削減しても儲からないのです。
顧客に選ばれるには、顧客へ届ける「コト」に焦点を当てます。
「モノ」ではありません。
1.価値の向上を目指す仕事の手法
「コト」へ焦点を当てる分析があります。
VA(価値分析)/VE(価値工学)です。
前者が購買視点、後者が設計・製造視点の違いはありますが、両者の目的、手法は同じです。
生産管理用語辞典(日本経営工学会編)はVAを次のように説明しています。
価値分析とは、
必要な機能を最低の原価で得るために、
その機能と原価のつりあいを研究し、
設計や材料の仕様の変更、
製造方法や供給先の変更などを、社内外の知識を統合して、組織的に、永続して行う活動である。
さらに、日本バリューエンジニアリング協会では、VEの基本原則を定めています。
VEを正しく活用するための行動指針であり、次の5原則です。
1.使用者優先
2.機能本位
3.創造による変更
4.チーム・デザイン
5.価値向上
組織的に、顧客視点で、価値の向上を目指します。
生産活動のQCDを踏まえて、価値を生み出します。
手法への理解度を深め、実践を通じて貴社現場への浸透を図ります。
それが独自の仕事のやり方となるのです。
2.価値を上げる4つの手法
価値は次式で定義されます。
価値=機能÷コスト
したがって、価値を上げる方法は4つです。
1)機能↑、コスト→
2)機能↑、コスト↓
3)機能→、コスト↓
4)機能↑↑、コスト↑
基本的には、4つの方法で価値を上げます。
現行対比で、機能は維持かアップです。
足回り系自動車部品の製品開発を担っていたときの話です。
コスト削減のVE/VA提案を客先へ何度かしたことがあります。
自動車部品では、製品開発・設計段階で顧客仕様に応えた製品をつくります。
この時点で顧客の要求に応えるわけです。
それ以上の機能は、その製品で不要です。
当然ですが、それ以下の機能はNGです。
したがって、自動車部品のVE/VA提案では、
3)機能→、コスト↓
を目指します。
例えば、加工表面の仕上げ精度を変更する提案をしたことがあります。
その部品が果たすべき機能を考えると、加工表面の仕上げ精度を下げることができる。
加工時間の短縮につながります。
機能を維持したまま、コストを下げられます
機能は技術的、工学的な要因でなくても構いません。
サービスという視点もあります。
機械加工を柱とした現場で、新たなサービスを展開したことがあります。
客先へ足を運んでは「困りごと」を尋ねるのです。
「従来の加工技術+困りごとヒアリングサービス」です。
新たな営業活動が加わるので、コストは上がります。
しかし、それ以上の価値を、顧客へ提供できます。
4)機能↑↑、コスト↑
を目指しました。
顧客との関係性の強化もできます。
長期的視野で事業を強化するために大切な視点でした。
3.今後、大切になる価値を高める5つ目の手法
さらに、5つめの方法として、機能↓、コスト↓↓が思いつきます。
ただし、一般的にVA/VEは、「機能下げる」という考え方はしません。
しかし、この5つ目の方法は、開発、設計段階で必ず取り入れたい方法です。
製品開発段階で適用します。
つまりDR(デザインレビュー)です。
かって、国内家電メーカーは、新興国にこの戦略でやられました。
ローカルニーズをとらえた新興国のメーカーは、販売地域のニーズをとらえました。
機能を絞り、地域ごとに必要な仕様を設定したのです。
出来上がった製品の機能水準は、必ずしも高くないです。
しかし、安価で顧客のかゆいところに手が届いていました。
一方、機能重視で開発した国内メーカーの製品は、高額で過剰品質でした。
現地でどちらが売れたかは言うまでもありません。
そこで、5つめの方法を、製品開発のときに活用します。
自社製品が、過不足なく顧客に価値を届られるのか否かを確認するのです。
マスカスタマイゼーションは中小製造企業が目指すべき方向のひとつです。
個別要求に応えながら、大量生産で実現する低コスト水準を実現します。
的確な仕様設定が欠かせません。
そもそも、顧客の要求に応えていなければ選ばれません。
一方で、過剰品質では高くつきます。
コストを削減する機会が最も大きいのは、製品開発・設計段階です。
製品の仕様がいったん設定され、生産が始まると、制約条件が増えます。
したがって、製品開発・設計段階のDRへ、VA/VEの考え方を取り入れるのです。
過不足のない的確な仕様設定で、顧客へ届ける価値の最大化を図ります。
マスカスタマイゼーションを目指す中小製造現場で求められるスキルです。
今後、その重要性が高まります。
製品開発・設計段階でVA/VEの視点を取り入れて価値を最大化する仕組みをつくりませんか?