そこで、設計標準化、共通化を高付加価値化の原動力と考えるのです。販売価格という制約条件の中で、製品の魅力(付加価値)を最大限発揮させる手段とします。トヨタ自動車でも新たなプラットフォーム「TNGA(Toyota New Global Architecture)」を発表しています。2015年発売の新プリウスに適用しました。トヨタ自動車はGEやVWと世界生産台数1000万台規模で競争してます。新プラットフォームがもたらす効果は莫大です。一方、富士重工業は世界生産100万台規模を狙うメーカーです。大手と比べて一桁小さなメーカーが同様な戦略では絶対に勝てません。吉永社長も「量で勝てない我々は他社と違う価値を提供しなければならない」と語っています。スバルグローバルプラットフォーム(SGP)ではクルマの電動化への対応も視野に入れています。EVにも対応する共通車台なのです。25年ごろまでは、大幅なクルマの設計変更が不要になります。つまり、富士重工業は10年先まで見通して、今回の新プラットフォームを考えたのです。設計上の制約の中で生み出せる商品の魅力を考え抜いたと推察されます。新プラットフォームの途中変更は、当然に混乱を招きます。しばらくしてから、ここはこうするべきだった、となったら、たいへんです。プラットフォームを変更する費用が莫大になることは想像に難くありません。それ故に10年先まで見据え、ありとあらゆる可能性を洗い出し、推測し、整理したでしょう。その背景には経営戦略があり、事業戦略があります。つまり、SGPは今後10年間の車づくりに関するコンセプトなのです。社内に提示した具体的なメッセージとも言えます。社内のベクトルを一つの方向へ揃えます。意識の共有化やベクトルの統一化はエネルギーを生み出します。共通化は高付加価値化の制約条件ではなく、原動力なのです。富士重工業は国内メーカーで唯一水平対向エンジンの技術を有して走りにこだわっています。また、運転支援技術「アイサイト」などの安全技術を生かした、個性あるクルマづくりを進めています。SGPの採用で、ますます、個性が光る商品が登場するかもしれません。