人工知能(AI)やロボットを使う側になって現場を作業から解放する、という話です。
人工知能(AI)やロボットに現場の仕事を奪われると思いますか?
現場は人工知能やロボットを活用するスキルを身につけます。
現場を作業から解放するのです。
そして、現場は付加価値を創出する業務に汗をかきます。
デジタルの時代だからこそ、アナログのコミュニケーション能力を高める必要もあります。
1.人工知能やロボットが人間の仕事を奪う?
人工知能やロボットの進化には目覚ましいものがあります。
儲かる工場経営を目指すなら、高付加価値化の視点がますます欠かせなくなりました。
かっての日本は、安くていいものを大量に世の中へ供給することを実現させました。
欧米に追い付き、追い越せと先輩たちが頑張った結果です。
しかし”安く”という特徴は1990年代以降、アジアの新興国に奪われて久しいです。
さらに人工知能やロボットの登場です。
中小の工場経営で価格競争に挑む余地は、ほぼなくなりました。
人工知能やロボットが対応できるような
製品の製造販売、あるいはサービスは、まず間違いなく価格競争に巻き込まれます。
人工知能やロボットの進化は、避けられない外部環境の変化です。
この変化を機会としますか?
脅威としますか?
豊かな成長を目指す現場での仕事のやり方を見直すよい機会としませんか?
人工知能の得意なところと不得意なところを眺めるのです。
2.人間がやるべき仕事とは?
東京大学教授の柳川範之氏は、次のことを指摘しています。
人工知能やロボットが人間の仕事を奪うのではない。
人工知能やロボットを使う人間が人間の仕事を奪う。
実は、仕事を奪うのはAIそのものでなく、その裏側にいる人間だ。
ロボットがプロ棋士に勝ったというニュース
はAIの発達の成果としてよく例に挙げられる。
しかしプログラムを作成したのは
人間であり、しかもそこで用いられたデータは、過去に人間が指した棋譜だ。
言ってみれば、
ロボットを駆使した人間がプロ棋士に勝ったに過ぎない。
SF的な未来を考えない限り、
コンピューターやロボットが
人間から完全に独立して、自らの意思を持って仕事をし、人間の仕事を奪うことはあり得ない。
従って、AIやロボットが仕事を奪うのではなく、それを使う人間が他の人の仕事を奪うのだ
(出典:日経新聞2016年1月13日)
人工知能 = SF映画のイメージ、となりがちです。
しかしながら、その本質は「過去のデータの蓄積」です。
つまり「人間が考え出すアルゴリズム」です。
人工知能のプログラミングも、
極言すれば、現場のロボットの動きを設定するティーチングとなんら変わらない。
今は、こう考えます。
当然、アルゴリズム自体がどんどん高度化します。
したがって、人工知能が実現できることもどんどん高度化します。
信じられないような複雑なことをやってのけるようにもなるでしょう。
そもそも、技術の進化の程度を予測することは不可能です。
これは、人工知能に限った話ではありません。
モノづくりを事業とする私たちは技術を道具として使用しています。
ですから、人工知能の使える点に着目して考えるのです。
予測不可能な人工知能の”負”の側面はいったんブラックボックスにしまっておきます。
人工知能が進化したおかげで、ロボットがこなす仕事が”若干”高度化しました。
繰り返しの単純作業に加え、過去のデータに基づいた最適解を選択できるようになっています。
したがって、過去の判例に従うような創造性が低い”事務処理”を人口知能に任せられそうです。
創造性が低い「手続き、処理作業」を専門的な仕事と考えていた人達はパラダイムシフトに直面します。
野村総合研究所と英オックスフォード大学マイケルA・オズボーン准教授は下記を発表しました。
共同研究(2015年)の結果です。
様々な職種でコンピューター化可能確率を算出しました。
90%以上の確率でコンピューター化される職種として次をあげています。
金属熱処理工、金属プレス工、
NC旋盤工、電子部品製造工、
プラスチック成形工、
マシニングセンター・オペレーター、
鋳物工、CADオペレター、・・・・・・・。
現場のノウハウを生かしながらやっている職種もあります。
ほんと?と疑いたくなるところもありますが・・。
要するに単純な肉体労働は全てロボットがやってくれると考えれば納得です。
これらの他で、意外であったのが、公認会計士、弁理士、司法書士、その他法務従事者。
こうした仕事も90%以上の確率でコンピューター化されると評価されています。
”士業”の先生方も資格の上にあぐらをかいているわけにいかないようです。
国家資格である士業であっても創造性が低い「手続き、処理作業」だけでは食えない。
野村総合研究所とオズボーン准教授の研究結果は、現場で目指すべき状態を教えてくれます。
人間がやるべき仕事は人工知能やロボットができない仕事である。
創造性が求められる付加価値の高い業務である。
現場は人工知能やロボットを使いこなせばいいわけです。
3.人工知能やロボットを使う側になる
東京大学の柳川教授は人間に今後必要とされる能力として3つ挙げています。
1)AIを活用する能力
コンピュータに何をどこまでさせるかの設計。
2)新しい結合により付加価値をつける能力
人工知能の導き出した結果を活用しつつ、新たな付加価値を追加する業務。
3)コミュニケーション能力
人間間のコミュニケーション能力、チームワークなどの社会技能。
逆に言うと、この3つは人工知能やロボットが不得意な分野です。
これらは、
・人工知能やロボットに負けない現場力
・人工知能やロボットを使いこなす現場力
を考える上での3つの視点とも言えます。
3-1 AIを活用する能力
仕事を奪われる立場に立たねばいいわけです。
モノづくりの現場でも人口知能やロボットを使ってなんぼと考えます。
プログラミングやシステムの構築は専門家に任せます。
モノづくりに携わる私たちは、現場の作業をいかにアシストできるかを考えるのです。
人間に”作業”はさせない状態を目指します。
現場には創造性が必要な業務をこなしてもらうのです。
現場のものづくり力を高めます。
標準化のような多様な知識を必要とする仕事を現場にどんどんやってもらいます。
製品仕様、製造技術、生産技術、あらゆる知識が必要です。
いつまでも現場に作業をやらせていては、企業の存続と成長が危うい状況に陥ります。
3-2 新しい結合により付加価値をつける能力
人工知能の導き出した結果 + 自分の経験 = 新たな付加価値。
現場による付加価値創出の機会を拡大させるのです。
勘と経験だけでなく、ここで人工知能を活用します。
作業から解放された現場が、創造性の高い業務に従事して、生き生きと働いている。
実現できれば、やりがい、働きがいに満ちた工場になります。
現場で自律性、有能性を感じる機会が増えるからです。
3-3 コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、業務の付加価値を高める上で基盤になるところ。
ヴァーチャルではないリアルの世界。
製品やサービスを受け取って満足度を評価するのは結局、生身の人間です。
人工知能やロボットではありません。
付加価値を高めるキモは、人間をどれだけ理解しているかということにつきます。
また、人工知能やロボットから得られた成果を生かすにもコミュニケーション能力が問われます。
最適解を的確に周囲に伝えなければ仕事は進みません。
工場経営における人間の研究には終わりはないのです。
アナログの力の高度化も工場経営で欠かせない課題です。
デジタル化が進めば進むほど、そうです。
まとめ。
人工知能やロボットを使う側になって、現場を作業から解放する。
現場による付加価値創出の機会を拡大させる。
デジタルの時代だからこそ、アナログのコミュニケーション能力を高める。
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