戦略的工場経営ブログ○○主義で高付加価値化に必要な「コト」を探る
三現主義はモノづくり現場のみならず、お客様視点で「コト」を創出するためにも有効な手段である、 と言う話です。 高付加価値化で欠かせないのは、お客様視点です。 「コト」に着目することです。 「コト」を創出すれば、新たな市場を生むことができます。 価格競争を回避できます。
1.高付加価値化はモノづくり工場で必ず直面する経営課題
工場経営では「付加価値拡大」が存続と成長のための課題となります。 具体的な取り組みとして「キャッシュを増やす5つの正攻法」があります。 (戦略的な工場運営で「5つの正攻法」を意識する) その中で柱とすべき活動は、 ・高付加価値化で(製品やサービス)単価を上げる。 ・販路開拓で販売数量を増やす。 によって売上高を増やすことです。 ですから、工場経営のキモは、高付加価値化へ対応できる組織能力を持つことにあります。 高付加価値化製品や高付加価値化サービスを開発できる組織力です。 また、効率よく、かつタイムリーに提供できる現場力にあります。 中小企業は、2000年代以降、自助努力で付加価値を拡大させています。 市場と直接向き合う機会を増やして、付加価値を生み出しています。 これは、1990年代以降、大企業との取引希薄化が進んだ結果です。 その結果、高収益率を達成する企業とそうでない企業との格差は拡大しています。 1980年代と2000年代以降を比べると顕著です。 (付加価値を拡大し続けるためには絶対に○○が必要) この格差は、高付加価値化への対応力の差によると推察されます。 1980年代までは、多くの中小企業が下請け構造をベースに事業を展開できていた。 そして、そこでは製品そのものをゼロから開発する必要性は低くかった。 指定された仕様の範囲で考えればよかった。 その範囲内で、上手く、効率よく、いいモノを造ることに専念できたのです。 ところが、1990年代以降は、外部環境が変化しました。 大企業とのつながりが弱くなり、大企業への依存度を低くせざるを得なくなってきたのです。 これは、今後、ますます、強まる外部環境の変化と言えます。 したがって、モノづくり現場は、直接に市場と向き合う必要に迫られます。 高付加価値化製品や高付加価値化サービスを自社で生み出す能力が必要になります。 必ず直面する経営課題です。 あるいは、多くの経営者の方は、もう直面しているかもしれません。2.高付加価値化では顧客視点の「コト」に着目する
価値は顧客が評価します。 ですから、付加価値を高める時は”顧客に選ばれる”という要素が絶対です。 そのためには、顧客や消費者が期待する「コト」への意識が欠かせません。 時代は「モノ消費」から「コト消費」へ。 マーケティングの話でよく耳に言葉です。 最近はモノづくりでも同様なことが言われています。 つまり、コトを意識した製品やサービスではないと造っても売れない、選ばれない。 多くの日本人はすでに必要な「モノ」をほとんど手に入れています。 そこで人々の関心は「モノ」から「コト」へ移行していると言われています。 所有欲はほぼ満たされた。 目に見えない価値に関心を持つ人が増えているのです。 経験や体験、達成感、満足感、人間関係、社会貢献、思い出、共感、一体感、等々・・・。 高付加価値化を考える時に「コト」に焦点を合わせます。 顧客視点です。 高付加価値化とは「コト」であると意識すれば、的を射た取り組みができます。3.「モノ」よりも「コト」に着目したモノづくり
モノづくりで ・「モノ」に着目した場合 ・「コト」に着目した場合 それぞれ、どのような製品が出来上がるでしょうか。 ・「モノ」に着目したモノづくり:高機能な製品、高性能な製品。 ・「コト」に着目したモノづくり:使って便利、気持ちイイ、楽しい製品。 前者が数字で説明できるのに、対して後者は数字で簡単に説明できない。 ここに大きな違いがあります。 「モノ」に着目したモノづくりでは、価格競争に巻き込まる懸念があります。 その結果、利益を継続して獲得できない事態に陥ります。 事例として、 国内デジタル家電(デジタルカメラやDVDプレーヤー、薄型テレビ等)がよく上げられます。 一方で、アップルのiPhoneやiPadは、コトのイノベーションの成果だとしばしば語られます。 つまり、「コト」に着目したモノづくりは価格競争回避戦略です。 「モノよりコト」で海外へ攻める日本企業の事例として ・リコーのプロジェクター ・クボタの田植え機 が2014年1月30日(木)日経ビジネスオンラインで挙げられていました。 「コト」を理解するのに役に立ちます。インド国内には125万の小学校があるといわれている。 貧しい地域も多く、先進国のようにタブレットを1人1台支給することはできない。 プロジェクターで全員が見られる状況を作り出すことで授業を分かりやすくしようとしている。 そこでリコーは日本の教材開発会社と組んだ。 日本で培った授業で使う副教材をプロジェクターなど機器とともに販売する。 ただ機器を販売するのではなく、授業の中身を提案することにしたのだ。 この市場には韓国や中国メーカーなど競合他社も注目し、参入が相次いでいる。 プロジェクターは機能で差異化できる点が少ない。 価格競争に陥り利益をとれずに消耗戦となりかねない。 プロジェクターというモノではなく、 授業というコトを販売することで値崩れを防ぎ継続的な取引を目指している。(出典:日経ビジネスオンライン2014年1月30日)
タイやベトナム南部などは、日本のように苗を育てて1本ずつ丁寧に植えない。 畑に種をばらまくため、田植え機の需要がない。 苗を10日間かけて育ててから植える必要があるなど手間がかかる。 モノ的発想からコト的発想への転換が活路を開く。 手間をかけてでも、収穫高が増えて効率が良いことを示す必要があった。 同じ農機でも、稲刈り作業に使うコンバインは機械を導入することで生産効率が高まる。 費用対効果がみえやすいため、機械化による効果を訴求すれば良い。 田植え機は、農家の考え方を変えることがから始める必要があった。 そこでクボタは、田んぼを借りて効果を検証する場を作った。 田植え機を使うことで、収穫高が10~20%増えることを証明した。 この田んぼに見込み客である農家を呼んで体験してもらった。アップルのiPhoneやiPadを含めて、上記の2事例から気が付く事があります。 それは「市場に顕在化しているニーズに直接に応えたワケではない」ということ。 iphoneが発売された当初、どれだけの人がその価値を理解できていたか。 ウォークマンがソニーから始めて販売されたのは1979年です。 当時社内からは、録音機能の無いテープレコーダーは絶対に売れないと反発がありました。 こちらも発売当初は売れ行きが芳しくなかったそうです。 リコーのプロジェクターは、 授業というコトと組み合わせて価格競争を避けたポジションを確立しました。 また、クボタの田植え機は、 一見、需要がなさそうな市場に体験というコトを組み合させて需要を喚起しました。 どの事例も、単に市場に顕在化しているニーズへ、直接に応えたワケではありません。 一歩踏み込んで、新たに市場を創り出しているのです。 自ら生み出した市場ですか、自らがトップに立てます。 価格決定権を握ることができます。 コトを生み出すために、当然、市場調査は必要です。 ただし、目に見える顕在化されているニーズを取り上げるだけでは不十分です。 見えないコトにも注目し、潜在的なニーズにも気が付くことが大切です。 つまり、存在するコトだけでなく、現在は存在していないコトにも注目。 「新たに市場を創り出す」ためには、こうした視点が必要です。(出典:日経ビジネスオンライン2014年1月30日)