戦略的工場経営ブログ「定型」は現場に「定着」と「破壊」を促している

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貴社の現場に「型」がありますか?

1.定着させるために定型を持つ

QCストーリーは、改善活動の成果発表でしばしば使われるルーチン化した問題解決手順です。

テーマ選定
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テーマを取り上げた理由の説明
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目標(あるべき姿)の把握
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要因分析
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対策(解決案)提案
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効果確認
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歯止め(成果の維持と問題再発防止)
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残された課題と今後の進め方のレビュー

これは、発表のためのフォーマットにとどめず、実務でも生かしたい思考方法でもあります。このQCストーリーの手順のなかで、特に重視したいのは次の2つです。

・目的(あるべき姿)の把握

・効果確認

現場のやる気を引き出す環境づくりを考えたら、欠かせない論点となります。取り組んだ仕事の結果を評価するには、”判断基準”が必要だからです。目的やねらいのない業務は、仕事ではありません。

現場は改善活動に汗を流した。現場としては、事態を前向きに進めたつもりだが・・・。それって、結局、利益につながっているの?モノづくり連鎖の全体最適化に役立っているの?

「目的(あるべき姿)」が事前に設定されいないと、「効果」は確認できないのです。

現場は、自職場を、工場全体を、少しでも良くしたいと考えています。人生をかけて仕事をしている場所です。役に立ちたいと考えています。

それなのに、目的やあるべき姿がはっきりしない状態で仕事を進めても、達成感は今ひとつです。現場は「効果」の判定ができない仕事にやりがいを感じるでしょうか?

そもそも「目的(あるべき姿)」は、経営者にしか描けません。利益やモノづくり連鎖の全体最適化につながる目指すべき状態は、経営者が決めることです。テーマの選定は、現場へ丸投げできないことだと、たびたび申し上げています。

QCストーリーは、実務でも生かしたい「定型」の思考方法となります。

・目的(あるべき姿)の把握

・効果確認

特に、これら2つを明らかにする仕事の流れを現場に定着させたいのです。仕事の「型」とも言えます。なぜ、型を持つべきか?経営者の思考回路を共有したいからです。

「定型」は繰り返されます。繰り返されたことは、身に付けられます。「定型」は、組織に経営者の思考回路を定着させる手段です。現場に定着させたかったら「定型」を考えることになります。

現場作業も同様です。望ましい仕事の手順は「標準」で示されます。この「標準」が、まさしく「定型」です。現場に定着させたい望ましい仕事の手順です。現場で定着させたいことがあったら「定型」から始めます。

2.「定型」を壊す

「定型」は、現場に定着させる役割とともに、もうひとつ、重要な役割を持っています。

それは、現場に改善を促すことです。

「定型」があるからこそ、新たなアイデアが生まれます。

中小製造現場の管理者を担っていたときの話です。

生産している部品は鋼製でした。φ20で長さ50程度の小さな部品です。数千個単位で出荷箱に詰め納入していました。その鋼製部品の防錆が技術課題に上がったのです。

一般的には防錆油を塗布しますが、要求仕様上、それが許されません。

そこで、その出荷箱を梱包し、防錆油にかわって、不活性ガス注入を対応策としたのです。そうなると、このガスの注入作業は、製造品質を左右する重要な作業となります。

いよいよ、それまで現場任せであった作業を、標準化しようということになりました。そうして、加工から梱包、ガス注入までの手順の標準を作成しました。

「定型」をつくったわけです。「定型」を通じて、現場への定着を図りました。

しばらくして、現場リーダーより提案がありました。もっと、効率よく作業ができる方法があるというのです。若干の設備投資が必要でしたが、運搬作業が半分になります。

この作業工数を減らして、別の作業を取り込めるようになります。現場の作業を詰めて、空けて、取り込むのは人時生産性向上の論点です。なるほど、ということで改善テーマとして取り組みました。

そのとき現場リーダーが言った一言が記憶に残っています。。

「自分たちがやっている仕事って、意外と理解していないものですね。」

つまり、仕事の流れが、文書化されてムダが見えたというのです。標準=定型があって、ムダが見えました。理想と現状を比べることができたからです。

さらに、作業の標準化ができるのも、生産管理体制が整備されているからです。その現場でも、少しずつでしたが、生産管理体制を構築しているところでした。仕事の「定型」が進んでいたときです。

「定型」があると、見えてくるものがあります。理想と現状を比べられるからです。さらなる生産性向上をめざそうという目標を掲げればもっとムダが見えてきます。

新たなアイデアは、定型のモデルやスタイルから生まれるものです。斬新的な発明にも、土台となる「型」があります。

定型の考え方ややり方に「限界」を感じたときに、ブレークスルーが生まれるからです。

定型とは、「今」の状態です。「今」の状態を知り尽くしていないと、的を射た改善活動ができません。そもそも、ブレークスルーという表現には、「型」を壊すというニュアンスがあります。

型破り、守破離、などの表現もしかりです。壊すべきものがなければ、改善もイノベーションもあり得ません。ですから、「定型」は、現場に改善を促すのもなのです。

「定型」は、現場に定着と破壊を促します。

壊すものがなければ、進歩はできません。

「定型」を持つことの意味を、改めて考えていただきたいです。

繰り返して申し上げていますが、標準のないところに改善はありません。

「定型」から改善やイノベーションへつなげる仕組みをつくりませんか?

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