現場の安全衛生活動は現場の安全意識を高めるのに貢献していますか?
1.安全衛生管理は影の主役
工場は存続と成長に必要なお金を生み出します。
現場の使命です。
モノづくり事業の原理原則です。
疑う余地はありません。
ただし、絶対的な前提条件があります。
現場の安全衛生管理が機能していることです。
安全衛生管理ではバランスが求められます。
安全衛生管理抜きのモノづくりは、絶対にあり得ません。
一方で、本業を疎かにする安全衛生管理は本末転倒です。
安全衛生管理は影の主役です。
安全衛生は絶対に必要なものではありますが、主役になるべきものではありません。
組織風土や組織文化のように現場に浸透している状態が最も望ましい姿です。
日常の生産活動で、意識していなくても、自然にそうしたくなる。
現場環境そのもので安全状態を維持できている。
こうした状態です。
常時に安全意識を「強いられる状況」では、本業でいい仕事はできません。
かえって、災害が発生するリスクを高めます。
安全衛生の意識は強いるものではなく、浸透させるものです。
管理者として毎日枕を高くして眠りたかったら、そうした状況を目指すべきです。
そうでなければ、毎日ヒヤヒヤもので、体が参ってしまいます。
安全衛生活動が現場に浸透している状況とは次の2つであると痛感しています。
1)意識レベルにまで落とし込んでいること。
2)不安全行為をやりたくてもできない、そうならない状態にすること。
後者は、主に、ハード面での安全対策です。
柵を設け、インターロックを設け、物理的にそうならない環境を整備する。
絶対的な効果が期待できますが、当然に費用がかさみます。
安全衛生のための出費と付加価値創出のための出費。
どちらを優先させるか?
原理原則は理解できても、資金に制約がある中小の現場では頭を悩ませる問題です。
そこで、後者よりも重視したいのが前者です。
安全意識が自然と沸き上るよう、意識レベルにまで安全意識を落とし込むことです。
2.生産ラインの管理者時代の経験
自動車部品の製造ライン、
受注生産形式の加工ライン等、
複数の職場の管理を担当していた時期がありました。
現場作業者は全部で50名程度でした。
昼夜勤職場もありました。
24時間体制で、常に気持ちが張りつめていたことを思い出します。
この管理者時代に、安全衛生に関する問題で苦労したことがあります。
安全衛生に関するトラブルが頻発する問題に直面したのです。
毎月、少なくとも1件は発生する状況が、約半年続きました。
工作機械での巻き込まれによるケガ。
微小災害とはいえ本人にとっては痛い出来事。
体調不良が原因で、作業者が、現場で倒れる事態も起きました。
家族も心配します。
等々、こうした出来事が、なぜか、毎月発生する状況が続いたのです。
ひとつの出来事への対応が終わったと思ったとたんに、次の出来事が・・・。
またある時は、対応策を検討している際に次の出来事が・・・・。
それまで、数年に渡り、これと言った安全衛生上の問題がなかった現場です。
悪い流れを断ち切ろうと、発生の都度、対応策を現場へ打ち出しました。
各現場のリーダーもいっしょになって、対応策の浸透に向けて汗をかいてくれました。
お陰で個別の対策を適切に進められ、約半年後には悪い流れを断ち切ることが出来ました。
安全衛生管理で様々なことを実践しました。
そうして、3つのことを実感するに至りました。
1)現場は安全よりも、早く良いモノを造る方を優先したがる。
現場での生産活動にはリズムがあります。
そのリズムを崩すような安全対策は、なかなか現場に定着しません。
日本人って本質的にまじめな人種だなぁと思うのはこうした場面です。
安全が最優先だから、効率を落として作業をやればいいよ、と現場へ伝えましが・・。
そうはならなかった。
モノづくりに携わる人のこだわりです。
良いものを効率よく造るという想いを優先させたいと現場は言ってきたわけです。
こうした現場の想いに配慮をした対策が必要です。
現場では(安全は当然ですが)良いモノをつくってナンボですから。
2)絶対的な安全はないが、ハード面での対策で得られる安心感は高い。
そもそも危ない状況にならない環境と整えることが現場での基本です。
ただし、費用上の制約条件は当然にあります。
これは経営者の戦略的な意思決定次第です。
3)頭ではなく、体にルールを覚えさせるよう決定的なルールだけ意識に刷り込む。
安全作業の手順をルール化するだけでは不十分です。
手順を守らなかったら事故の再発がありえるからです。
ですから、複雑なルール、面倒な手順ではダメです。
決定的なルーㇽに絞り込みます。
それを意識に刷り込ませるのです。
絞り込んだ決定的なルールを体に覚えさせることを狙います。
赤信号を観たら、誰でも自然と足がとまります。
アノ感じです。
そこで、意識に刷り込むべき決定的なルールを各設備で設定します。
労災やヒアリハット等が発生した設備から始めます。
そして、設備毎、安全上のポイントを3つ挙げるのです。
意識に刷り込むべき決定的なルールを、設備毎、3つに絞ります。
設定したい事項が複数ある場合でも、3つに絞り込みます。
3つを超えると、頭に残りにくいからです。
それを対象設備に掲示し、毎日唱和します。
意識に刷り込ませるため、作業標準票ではなく、ポスター形式で掲示します。
毎日、毎月繰り返し唱和して、頭に安全ポイントを定着させます。
全ての設備で、唱和すべき安全ポイントが明確になった状態を目指します。
そして、掲示と唱和の組み合わせで、意識レベルへの刷り込みを図るのです。
3.安全意識を定着させて現場は生産活動に専念する
現場は製品を造ってナンボです。
ですから、生産活動に影響する安全活動は避けます。
そうした配慮の中で、次の2つを実践します。
1)意識レベルにまで落とし込んでいること。
2)不安全行為をやりたくてもできない、そうならない状態にすること。
経営者や管理者による工夫が必要です。
上記では掲示と唱和を挙げました。
こうした工夫で安全意識を頭に定着させます。
生産活動と安全衛生活動のバランスを見極めるのは経営者の仕事です。
安全意識を定着させてつつ、現場が生産活動に専念できる状況を目指します。
そうすれば、管理者は毎日枕を高くして寝ることができます。
現場の意識に訴えかける安全衛生管理の仕組みを考えませんか?