戦略的工場経営ブログ労働生産性の国際比較2024年 

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公益財団法人日本生産性本部では、毎年12月に、OECDなどのデータに基づいて世界各国の国民1人当たりGDP、労働生産性(就業者1人当たり国内総生産、就業1時間当たり国内総生産)などの比較を行った結果を、「労働生産性の国際比較」として発表しています。昨年12月に「労働生産性の国際比較2024年」が報告されました。

以下の出展は、全て、公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2024年」です。

1.国民1 人当たりGDP の国際比較
 2023年OECD 加盟38 カ国中26位(2022年は27位)

2.就業者1 人当たり労働生産性の国際比較
 2023年OECD 加盟38 カ国中32位(2022年は31位)

3.就業時間当たり労働生産性の国際比較
 2023年OECD 加盟38 カ国中29位(2022年は31位)

4.製造業の労働生産性水準の国際比較
 2022年OECD 加盟38 カ国中19位(2021年は17位)

 ※製造業のデータは2022年である。

1.国民1 人当たりGDP の国際比較

国民1 人当たり国内総生産(GDP)は「経済的な豊かさ」を表しています。国際的に比較するにあたってはこの数値が使われるようです。

●国民1 人当たりGDP =国内総生産(GDP)÷人口

また、国民1 人当たりGDP をドルベースに換算する際は、各国間の物価水準の違いを調整した購買力平価(Purchasing Power Parity/PPP)レートを利用しています。OECDの2023年の円ドル換算レートは1ドル=94.68円です。

OECD(経済協力開発機構)に加盟する38カ国 の2023 年の国民1 人当たりGDP のトップ5は下記です。
 1位  ルクセンブルク  (143,527 ドル/1,359 万円)
 2位  アイルランド  (128,157 ドル/ 1,213 万円)
 3位  ノルウェー  (103,994 ドル/985 万円)
 4位  スイス  (92,580 ドル/877 万円) 
 5位  米国  (81,585 ドル/772 万円)

一方、日本の国民1 人当たりGDP は、OECD 加盟38 カ国中26位でした。
26位 日本 (50,276 ドル /476 万円)

この水準は、米国の6 割強であり、韓国(22位)を下回っています。

下記は日本の国民1 人当たりGDPの推移です。
 (年)(国民1 人当たりGDP)(順位)
 1970年   3,349   19
 1980年   8,974   17
 1990年   19,89   18
 1995年  23,866   6
 2000年  27,290   15
 2010年  35,343   18
 2020年  42,612   22
 2021年  44,653   26
 2022年  47,253   27
 2023年  50,276   26
(購国民1 人当たりGDPの単位は買力平価換算US$)

日本の国民1 人当たりGDP は、1996 年にOECD 加盟国中5 位になりました。主要先進7 カ国で米国に次ぐ水準でした。1990年代前半から半ばにかけては、主要先進7 カ国で米国に次ぐ水準だったのです。

しかし、1990年代後半以降は、経済的停滞により国民1 人当たりGDP は増えてはいるものの、成長率が低迷しました。徐々に他の主要国に追い抜かれる推移をたどっています。

OECD 加盟諸国の中でみると、2010 年代前半までは、1970~80 年代とほぼ同じ18~19 位程度を維持していました。しかし、2010 年代後半になると20 位台に後退しています。そして、現在、26位です。

また、主要先進7 カ国中では、2017 年以降、2023年までずっと、7番目、最下位です。

2.就業者1 人当たり労働生産性の国際比較

国民1 人当たりGDP として表される「経済的豊かさ」を実現するには、より少ない労力でより多くの経済的成果を生み出すことが重要です。利益アップと給料アップを実現させます。その原動力が付加価値額です。

就業者1 人当たり、あるいは就業1 時間当たりに積み上げる付加価値額が高まれば、利益も給料も増やせます。

労働生産性は、一般に就業者1 人当たり、あるいは就業1 時間当たりの付加価値です。国際比較では、付加価値をGDP(購買力平価によりドル換算)で評価しています。

●労働生産性 =GDP(付加価値)就業者数 (または就業者数× 労働時間)

OECD(経済協力開発機構)に加盟する38カ国 の2023 年の就業者1 人当たり労働生産性 のトップ5は下記です。
 1位  アイルランド  (255,780 ドル/ 2,422 万円)
 2位  ノルウェー  (199,315 ドル/1,887 万円)
 3位  ルクセンブルク  (186,942 ドル/1,770 万円)
 4位  スイス  (169,938 ドル/1,609 万円) 
 5位  米国  (169,825 ドル/1,608 万円)

一方、日本の就業者1 人当たり労働生産性 は、OECD 加盟38 カ国中32位でした。
 32位 日本  (92,663 ドル/877 万円)

この水準は、米国の55%です。

下記は日本の就業者1人当たり労働生産性の推移です。
 (年)(就業者1 人当たり労働生産性)(順位)
 1970年  6,834    19
 1980年  18,975   21
 1990年  39,343   13
 1995年  46,366   18
 2000年  53,693   20
 2010年  71,853   21
 2020年  79,829   29
 2021年  83,488   30
 2022年  87,824   31
 2023年  92,663   32

(就業者1 人当たり労働生産性の単位は買力平価換算US$)

日本の順位は2010 年から2020年の間で急激に落ち込んでいます。日本の就業者1 人当たり労働生産性水準は、OECD 加盟38 カ国の中では32 位にあたり、1970 年以降で最も低い順位を更新しました。また、主要先進国の中では最下位で、これは1994以降、ずっとそうした状況です。

3.就業時間当たり労働生産性の国際比較

OECD(経済協力開発機構)に加盟する38カ国 の2023 年の就業1時間当たり労働生産性 のトップ5は下記です。

 1位  アイルランド  (154.9 ドル/ 14,666円)
  2位  ノルウェー  (136.7 ドル/12,943円)
  3位  ルクセンブルク  (128.8 ドル/12,195 円)
  4位  ベルギー  (112.8 ドル/10,680 円) 
  5位  デンマーク  (103.9 ドル/9,837円)

2023 年の日本の就業1 時間当たり労働生産性は、OECD 加盟38 カ国中29 位でした。

 29位 日本 (56.8 ドル/5,379 円)

下記は日本の就業1時間当たり労働生産性の推移です。
(年)(就業1時間当たり労働生産性)(順位)
 1980年  8.4    19
 1990年  18.7   19
 1995年  23.6   20
 2000年  29.0   21
 2010年  39.8   20
 2020年  49.1   28
 2021年  51.1   28
 2022年  53.8   31
 2023年  56.8   29

(就業1時間当たり労働生産性の単位は買力平価換算US$)

日本の順位は2010 年から2020年の間で急激に落ち込んでいます。そして、2023 年の日本の就業1 時間当たり労働生産性は、OECD 加盟38 カ国中29 位でした。また、主要先進国の中では最下位で、これは1970年以降、ずっとそうした状況です。

4.製造業の労働生産性水準の国際比較

OECD(経済協力開発機構)に加盟する38カ国 の2023 年の製造業の1人当たり名目労働生産性就業のトップ5は下記です。

 1位  アイルランド  (727,099ドル/9,329万円)
  2位  スイス  (240,043ドル/3,080 万円)
  3位  米国  (214,382 ドル/2,751 万円))
  4位  デンマーク  (175,412ドル/2,251 万円)
  5位  オランダ  (150,464 ドル/1,931 万円)
 単位:USドル(加重移動平均により平滑化した為替レートを用いて換算)

2022 年の日本の就業1 時間当たり労働生産性は、OECD 加盟38 カ国中19 位でした。

 19位  日本  (80,678 ドル/1,035 万円)

米国の半分にも至らない水準です。

下記は日本の製造業の名目労働生産性の推移です。
 (年)(製造業の名目労働生産性)(順位)
 1995年  89,527    2
 2000年  86,894    1
 2010年  117,522   10
 2020年  94,717    17
 2021年  96,452    17

 2022年  80,678    19
単位:USドル(加重移動平均により平滑化した為替レートを用いて換算)

日本の順位は、2000 年にOECD 諸国でトップでした。その後2010 年に10 位へ落ち込み、2020 年以降をみると17から19 位へ順位を落としています。生産性が比較的高いとされるされる国内製造業でも、生産性が国政的に劣後しつつあるのは気になることです。

5.人時生産性向上のために

国民1 人当たりGDP と就業時間当たり労働生産性は、前年よりも、順位が改善されていますが、全ての生産性で低迷していることに変わりはありません。

1.国民1 人当たりGDP の国際比較
 2023年OECD 加盟38 カ国中26位(2022年は27位)

2.就業者1 人当たり労働生産性の国際比較
 2023年OECD 加盟38 カ国中32位(2022年は31位)

3.就業時間当たり労働生産性の国際比較
 2023年OECD 加盟38 カ国中29位(2022年は31位)

4.製造業の労働生産性水準の国際比較
 2022年OECD 加盟38 カ国中19位(2021年は17位)

※製造業のデータは2022年である。

そして、注目しておかなければならないことは、今は、過去より悪くなっているということです。国内的には数字を伸ばしていますが、残念ながら、他国の方が成長率は高くなっています。その結果、国際的に劣後しているのです。

弊社は、中小製造企業の経営者の方々を支援して、人時生産性向上の仕組みづくりをしております。利益アップと給料アップのためには、人時生産性、つまり就業時間1時間当たりに積み上げる付加価値額をドンドン増やすしかかありません。

中小製造企業は少数精鋭です。経営資源にも制約があります。そうであるなら、少々ムダが有っても構いません。とにかく積み上げることに焦点を当てることです。

弊社は、これからも、挑戦する経営者と一緒に進んで参ります。

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