現場の若手人財は元気にバリバリ仕事していますか?
1.働きがいを与えて動機付けを図る
現場の仕組みがしっかり機能している現場では、若手人財が元気です。
モノづくりの現場に、長年、身を置いて断言できることです。
目標が明確に示されている現場の若手は、力いっぱい働くことができます。
こうした職場で、若手が頑張れるのはなぜでしょうか。
そもそも人は、
「人の役に立ちたい。」
「チームのために頑張りたい。」
と感じる心を持ち合わせているからです。
自分が新米の現場技術者として汗をかいていた頃を振り返ると気付くことです。
人の本質には、こうした側面があります。
仕組みがしっかり機能している現場では、目標が明確であり、業務上の思考様式も共通です。
判断基準や評価基準があいまいではないからです。
経営者の想いにそった考え方を共有できます。
チームで仕事をする体制もあります。
その結果、若手は、自分がチームへまたは現場に、どう貢献をしているか知ることが可能です。
やりがいや働きがいを感じる機会があります。
有能性を実感できて、モチベーションも高まります。
2.働きがいと自分が成長することとは密接な関係にある
「不足」していると、職場への「不満」につながることがあります。
給与や職場環境、労働条件等です。
これは、どこの中小製造現場にも存在します。
大手のように経営資源が潤滑にあるわけではありません。
多くの制約条件を抱えているから、当然です。
そして、こうした項目には、最低限の対応をする必要はあります。
ただ、こうした項目への対応だけで、働きがいを感じさせるのは難しいです。
「不足」していることを補うだけで、
やる気を引き出すのは限界があると一般的に言われています。
不満を解消する手立てにはなるが、仕事上の満足を感じさせるまでには至らない。
つまり、働きがいを感じさせるには、これ以外に注目すべき項目がある、ということです。
働きがいに関連して、経済学者の東京大学教授 玄田有史氏の文章を下記に記します。
ある会社が、
優秀な社員が次々と退職していく事情を探ろうと、辞めることを決意した率直な理由を調べた。
すると多様な理由も、突き詰めれば二つの言葉に収れんされると感じたという。
一つは「先がまったく見えないから辞めた」。
もう一つは「先が完全に見えたから辞めた」だった。
収入や仕事の内容が不満で辞める人もいる。
しかし、大多数は、
先が見えたにせよ、そうでないにせよ、結局のところ、働きがいを感じられないために辞めるのだ。
(出典:2015年9月13日 日本経済新聞)
・自分が成長する姿を見通せない。
・自分の成長には制約がある。
こうしたことを感じた時点で、働きがいも失うと言う指摘は的を射ています。
若手人財の想いです。
「人の役に立ちたい。」
これは若手人財の内なる声です。
これを受け止めるため、若手人財へ提供すべきは、”成長の機会”です。
つまり、働きがいと自分が成長することとは密接な関係にあるわけです。
現場の若手に成長する機会を与えていますか?
もし、自職場の工場で、ワクワクするような将来の姿が見えていなかったら・・。
自職場での仕事のやり方が、昔から変わらずで、スキルの進歩を実感できなかったら・。
自分の成長を実感できる同僚や上司との人間関係が構築されていなかったら・・・・・。
これでは、将来の成長へ向けたワクワク感がありません。
所詮、この程度の成長しか見込めないであろうと、将来の自分の姿を見切ってしまいます。
こんな現場では、若手人財に、働き甲斐を与えることはできません。
3.働きがいを与える工場経営の実例(新米技術者だった頃の話)
働きがいを与える工場の実例です。
若手人財が自己の成長を実感できる機会としてです。
新米技術者だった頃、たびたび、品質クレームへの対応に当たりました。
ここでは、仕組みの有無が大切な論点です。
仕組みがあるからこそ、クレームは若手人財にとっては、学習の機会になり得ます。
お客様からのクレームは、モノづくり現場、対策優先度一番の問題です。
欠品していた、寸法が違っていた、納期が遅れた・・・。
現場は、まず、原因を究明します。
そして、再発防止のため、”仕組み”に修正を加えます。
クレームが発生した際、原因分析の初動ですべきことは、客観的なデータの収集です。
そして、仕組みがあれば、業務として、こうしたデータを、効率よく、淡々と集められます。
冷静な判断のもと、担当部門の責任者や作業者と、「業務」の話を進められるのです。
原因に気が付かなかったのは、仕組みのどこに問題があったのだろうか?
こうした分析をします。
仕組みがあれば、標準作業票が機能しています。
現状と標準作業の比較ができます。
したがって、従来の仕組み上の問題点を、指摘することが可能です。
ですから、問題が発生した時点を基準にして、そこから目指すべき状態を設定します。
ギャップを埋めていけばよいわけで、仕事の流れも明確なります。
仕組みがあれば、仕事そのものの客観性が高まります。
その結果、変化に、気が付きやすくなるのです。
問題を未然に防ぐ機能を果たします。
製造業の現場にふさわしい、科学的な対応が可能です。
こうした仕事の進め方を経験して、若手人財は科学的な考え方を身に着けます。
問題が発生しても、それは仕組みに問題があるから、という考え方を理解します。
また、問題は発生してから対応するのではなく、未然に防ぐものと考えるようになります。
仕組みがあるからこそ、日々発生する問題からも、貴重な学びがあります。
仕組みがあるからこそ、科学的な思考を訓練できます。
自らの成長を実感することができるでしょう。
自分の仕事が、どの貢献しているかに知るでしょう。
その結果、大いに働きがいを感じるのです。
4.クレーム発生時にもし仕組みがなかったら
上記は、新米技術者だった頃、自ら経験した、現場での仕事の進め方です。
一方で、もし、現場に、こうした仕組みがなかったら、どうだったでしょうか?
お客様からのクレームが届いたら、管理者は現場へどのような対応をとるでしょうか。
そして、若手人財はどのような状況に直面するでしょうか?
想像してみて下さい。
まず、担当部門の責任者を呼んで事情を聴くでしょう。
また、実際に業務に携わったのは作業者ですから、その作業者も呼び出され、事情を聴かれるでしょう。
なにせ、その時点で、判断する客観的なデータがないからです。
状況を聞き出すしかない。
仕組みがないから、個人へ追及の矛先を向けざるを得なくなるのです。
結果として、このやり方では、担当部門の責任者や作業者からの「事情聴取」となります。
「業務」の話にはなりません。
かれらに落ち度があった、というやりとりになるのがオチです。
客観的なデータが不十分で状況が見えないと、思考が感情に支配されやすくなります。
その結果、管理者は頭に浮かんでくる考えや不安や怒りを、そのままの言葉にしがちです。
挙句に、その担当者、作業者の個人名を出しながら、「~が悪い」という一方的な評価をします。
これでは「業務」でなく、単なる「非難」。
人知れず頑張っている担当部門の責任者や作業者のモチベーションは下がるのみ。
こうした事態は、絶対に避けなければいけません。
一生懸命にやっているのに、個人名で非難をうけたら、誰でもやってられない!となります。
ある現場で実際に体験したことです。
人の本質への配慮に欠けた対応が、現場のやる気をそぎます。
仕組みがないと、こうなってしまうのです。
仕組みがない現場では、人の役に立ちたいという本質的な、内なる声を活かすことは絶対にできません。
働きがいを感じる機会も少ないです。
個人的に問題点を指摘されないよう働く(動く?)こと、が目的となってしまいます。
若手人財のポテンシャルを生かせない、全くもってもったいない状況です。
経営者が最も避けたい事態です。
次世代を担う、若手人財がの力を生かせない現場に先はないからです。
5.若手人財に成長の機会を創る
現場で問題が発生した時にこそ、仕組みの”お陰”が得られます。
現場で問題が発生した時にこそ、仕組みを構築したことによる効果を実感できるのです。
ここでの体験が、若手人財にとっての最良の学びです。
下記の2つの視点は、儲かる工場経営で、絶対に必要な観点です。
1)問題が発生するのは、現時点の”仕組み”が最適ではないからである。
原因は人ではなく、仕事のやり方にある。
2)問題は仕組みを通じて未然に防ぐものである。
問題は発生してから対応するモノではなく、防止するモノ。
こうした観点は、若手人財に成長の機会を創ります。
チームや人の役に立つことで、成長を実感できる機会が増えるはずです。
こうした考え方に基づく工場経営で若手人財は働きがいを感じます。
若手人財に働きがいを感じさせる仕組みをいっしょにつくりませんか?