戦略的工場経営ブログ有形・無形の資産へ投資して成長しているか?

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0.収益は経営者の言動次第

中小企業白書2024年版では、下記の調査結果が述べられています。

中小経営者へ、投資などによる需要獲得や付加価値向上の行動を、今、するかどうか、尋ねて3分類に分けました。

①新たな需要を獲得するための⾏動をするべきとしている企業
 ②付加価値を⾼めるための⾏動をするべきとしている企業
 ③損失を避けるために静観するべき(投資⾏動等は⾏わない)としている企業

有形であろうが無形であろうが投資行動にはリスクがつきものです。そもそも、成果が得られる確証はないのです。投資行動は経営者の挑戦心の現われと言えます。そして、白書では、その挑戦心の有無と収益と関係があるかを調べました。

①②③、3つに分類した企業の売上高、経常利益、労働生産性の増加状況を調べると次の結果になったのです。

・売上高については、「付加価値を高めるための行動をするべき」と回答した企業で最も増加した。

・経常利益及び労働生産性については、「新たな需要を獲得するための行動をするべき」と回答した企業で最も増加した。

興味深いのは、「損失を避けるために静観するべき」と回答した企業の売上高及び労働生産性の変化率が負の水準となっていたことです。

経営者が抱く挑戦心の現われが、そのまま、収益結果に繋がっている傾向にあったことは記憶にとどめておくべきでしょう。製造業なら特に、そうなります。

製造業での現状維持は相対的な後退を意味するからです。製造業は技術の世界で戦っています。コア技術は日進月歩です。経営者は視点を将来に向け、そして行動しなければ、事業を継続させられないと、白書では解説しています。

このブログでは投資行動として、設備などの有形固定資産と無形固定資産への投資の有無が売上高にどのように影響を及ぼしているのか解説します。出典は全て中小企業白書2024年版です。

1.成長に向けた設備投資の実施状況(業種別)
 2.製造業での売上高の変化(成長に向けた設備投資の実施状況別)
 3.設備投資の実施有無別に見た売上高の推移
 4.無形固定資産投資の実施有無別に見た売上高の推移
 5.投資効果の検証

1.成長に向けた設備投資の実施状況(業種別)

白書では、「安定した経済成長を実現するために、企業の生産性を向上させるような設備投資が質的にも量的にも求められていると思われる」と指摘しています。設備投資は成長にとって重要な取組です。下記は直近3年間程度における成長に向けた設備投資の実施状況について確認しました。設備投資を実施したと回答した企業の割合が多いトップ5を見たものです。

●成長に向けた設備投資の実施状況(業種別)

宿泊業(n=456) 59.0%
 製造業(n=6,237) 55.0%
 運輸業(n=1,178) 46.7%
 ⼩売業(n=1,170) 42.2%
 飲⾷サービス業(n=1,139) 40.0%

設備投資を「実施した」と回答した割合が最も高い業種は「宿泊業」です。次いで「製造業」、「運輸業」となっています。これらの業種は持続的な成長に設備投資が欠かせないのです。中小製造企業でも半数以上の企業が直近3年間で設備投資を行っています。製造業での現状維持は相対的な後退であることの証左です。

2.製造業での売上高の変化(成長に向けた設備投資の実施状況別)

下記は成長に向けた設備投資の実施状況別に見た、製造業での売上高の変化を確認したものです。

●製造業での売上高の変化(成長に向けた設備投資の実施状況別)

設備投資を実施した企業の売上高変化 (n=3,416)
 増加54.1%   横ばい18.3%   減少27.6%

設備投資を実施していない企業の売上高変化 (n=2,776)
 増加35.4%   横ばい21.6%   減少43.0%

これを見ると、成長に向けた設備投資を「実施した」企業の方が、売上高が「増加」したと回答した割合が高いことが分かります。成長に向けた設備投資が売上高の増加に貢献しているようです。「実施した」と回答した企業群はおよそ半数が「増加」と回答しています。「減少」と答えた企業群の倍です。適切な設備投資は成長の後押しをしてくれます。

3.設備投資の実施有無別に見た売上高の推移

下記は、設備投資の実施有無別に売上高の推移を確認したものです。2017年に設備投資した企業群と2017〜2021年度の間⼀切実施していない企業群で比べています。2017年の売上高を100として、指標の変化を見たものです。

●設備投資の実施有無別に見た売上高の推移

2017年度に実施した企業 (n=946)
 2017年 100 
 2018年 107.3 
 2019年 106.5
 2020年 101.5
 2021年 106.3

2017〜2021年度の間⼀切実施していない企業 (n=10,290)
 2017年 100
 2018年 102.9 
 2019年 101.3
 2020年 95.0
 2021年 99.7

「2017 年度に実施した企業」は「2017~2021 年度の間一切実施していない企業」に比べて設備投資した後、売上高が増加している傾向にあります。その他の取組や経営者の手腕などの要素をあるので、この結果から一概にはいえないですが、一定規模の設備投資の実施が、成長につながる可能性があると言えます。

4.無形固定資産投資の実施有無別に見た売上高の推移

投資には設備投資のような有形固定資産の投資の他に「無形固定資産」の投資もあります。

・新しい金属加工技術を開発し、その特許を取得した。
 ・特殊な材料を用いた耐久性の高い部品の製造方法を特許化した。
 ・工場の生産ラインにおける簡単な自動化装置の仕組みを実用新案として登録した。
 ・製造した自動車部品のロゴを商標登録し、市場での差別化を図る。

自社専用の生産スケジューリングソフトウェアを開発し、製造ラインの効率化を図る。
AIを活用した品質検査システムを導入し、不良品の発生を軽減する。
こうした活動です。

下記は、無形固定資産への投資を、「2017年度に実施した企業」は「2017~2021年度の間一切実施していない企業」での売上高の推移を見たものです。2017年の売上高を100として、指標の変化を確認しました。

●無形固定資産投資の実施有無別に見た売上高の推移)

2017年度に実施した企業 (n=86)
 2017年 100
 2018年 101.5
 2019年 110.7
 2020年 109.4
 2021年 133.6

2017〜2021年度の間⼀切実施していない企業 (n=12,932)
 2017年 100
 2018年 103.3
 2019年 101.1
 2020年 95.2
 2021年 100.3

無形固定資産への投資を、「2017年度に実施した企業」は「2017~2021年度の間一切実施していない企業」に比べて、コロナ禍による2020年度の落ち込みが軽度かつ2021年度の伸びが大きくなっています。

無形固定資産投資の実施が同期間において効果があったかもしれません。他の要素もあるので、この結果から一概にはいえませんが、一定規模の無形固定資産投資の実施が、成長につながる可能性があるようです。

5.投資効果の検証

白書の解説では、有形であっても無形であっても投資による効果が売上高の変化に見て取れました。投資にはリスクを伴います。経営者の挑戦心がなければ意思決定できないことです。

投資を決断する経営者の言動はそれ自体が挑戦的であり、その言動は現場にも伝わります。現場は経営者の鏡です。積極的な経営者の姿勢が工場全体を前向きな姿勢に変えます。ご支援先の工場で強く感じることです。

投資の多くは時間を味方に付けて成果を出します。時間が掛かることであるので、成果の有無を時間軸で計測したいです。投資ではbeforeとafterを設定して、両者のギャップを埋めわせることが成果とされます。

したがって、投資にあたり、経営者はbeforeとafterを数値で右腕役へ提示する必要があるのです。そして、経営者は、右腕役や現場へ投資効果を時間軸に沿って検証をするように指導します。

なぜなら、投資は設備を設置すること、新たなソフトを導入すること、それ自体が目的ではないからです。儲かるようになることが目的です。付加価値額を積みあげ、工数を削減した結果、それほど人時生産性が高まったかの検証です。

我々企業はお金を投じたら、それを回収し、さらに儲けを積み上げて利益を獲得します。投資の源泉は投資です。成長の原資は自ら獲得しなければなりません。効果の検証は必要です。

挑戦心にあふれた経営者が、積極的に投資を実施、効果の検証をして、次の投資へ繋げることができれば、貴社は成長のスパイラルに突入しています。

弊社は挑戦する経営者と一緒に走って参ります。

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