戦略的工場経営ブログ人材が定着するための取り組みをやっているか?

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中小企業白書24年版では、「人材確保」についてページを割いています。「人材確保」は、中小企業が直面している経営課題のひとつです。人材確保で大事なのは採用と定着の両方にあると指摘しています。白書では、人材の定着につながり得る様々な取組について分析をしています。働き手のニーズに注目しているようです。

1. 仕事内容を選ぶ上で重視すること 
 2. 仕事内容を選ぶ上で重視すること(2019年と2023年の⽐較)
 3. 人材の確保・定着に向けた人事関連施策への取組状況
 4. 働き方改善に向けた取組状況
 5. 従業員満足度の確認のための取組状況
 6. 日常のコミュニケーションの取組状況別、中核人材・業務人材の定着状況

1. 仕事内容を選ぶ上で重視すること 

下記は、働き手が仕事内容を選ぶ上で重視することを確認したものです。(株)パーソル総合研究所「働く10,000⼈の就業・成⻑定点調査」より中⼩企業庁が作成しました。調査時点は2023年です。

●仕事内容を選ぶ上で重視すること(n=10,000)

やりがいを感じられること  28.4%
 ⾃分のやりたい仕事であること  28.1%
 ⾃分の能⼒や個性が⽣かせること  21.8%
 ⾃律的に⾃分の判断で仕事を進められること  14.6%
 ⾊々な知識やスキルが得られること  14.3%

「やりがいを感じられること」、「自分のやりたい仕事であること」との回答が上位2つです。やりがいを感じさせる環境づくりは欠かせません。

2.仕事内容を選ぶ上で重視すること(2019年と2023年の⽐較)

下記は、仕事内容を選ぶ上で重視すること、2019 年と2023 年の数値を比較したものです。増加したもの、および減少したもののうち、それぞれ上位2つをあげています。

●仕事内容を選ぶ上で重視すること(2019 と2023 年の比較)(n=10,000)

①増加したもの(2019年と2023年)
 資格や免許の取得に繋がること   (7.2% 8.5%) 1.3%増加
 ⾊々な知識やスキルが得られること (13.2% 14.3%) 1.1%増加

②減少したもの(2019年と2023年)
 やりがいを感じられること   (33.8% 28.4%) 5.4%減少
 ⾃分のやりたい仕事であること (31.4% 28.1%) 3.3%減少

これを見ると、増加したものの上位2つは「資格や免許の取得に繋がること」、「色々な知識やスキルが得られること」です。働き手は自身が成長できると感じられる仕事を求めています。一方、減少したものの上位2つは「やりがいを感じられること」、「自分のやりたい仕事であること」です。これらは、いずれも全体の中で回答割合が高いものでした。働き手が重視することについて、トレンドに変化が起きつつあるのかもしれないと、白書はSH適しています。働き手のニーズの変化にも目を向けることが重要です。

3.人材の確保・定着に向けた人事関連施策への取組状況

下記は、人材の確保・定着に向けた人事関連施策の取組状況について、中核人材・業務人材が十分に定着していると回答した企業のみを対象に集計したものです。

●人材の確保・定着に向けた人事関連施策への取組状況(中核人材・業務人材が十分に定着している企業)

(1)賃上げ n=1507 
 積極的に行っている 40.7%   ある程度行っている 48.9%

(2)専門性に応じた業務分担・配置 n=1502 
 積極的に行っている 25.6%   ある程度行っている5 0.1%

(3)キャリアプランの明確化 n=1492 
 積極的に行っている 10.5%   ある程度行っている 27.7%

人材が定着している企業では、「賃上げ」が90%、「専門性に応じた業務分担・配置」が75%でやられています。この2つは、人材の定着に一定程度寄与している可能性があるようです。持続的な賃金アップができる中小が人材を確保できます。

4.働き方改善に向けた取組状況

下記は、働き方改善に向けた取組状況について、中核人材・業務人材が十分に定着していると回答した企業のみを対象に集計したものです。

●働き方改善に向けた取組状況(中核人材・業務人材が十分に定着している企業)

(1) 休暇制度の充実(n=1,509)  
 積極的に行っている 39.1%    ある程度行っている 48.0%

(2) 労働時間の⾒直し(n=1,509)  
 積極的に行っている 31.7%    ある程度行っている 43.0%

(3) テレワークの推奨(n=1,502)  
 積極的に行っている 12.5%    ある程度行っている 17.6%

これを見ると、人材が十分に定着している企業では、休暇制度の充実が90%で、労働時間の⾒直しが75%で行われていることが分かります。これらは人材定着に重要な役割を果たしているようです。

5.従業員満足度の確認のための取組状況

下記は、従業員満足度を確認するための取組状況について確認したものでする。従業員満足度を自社で調査している企業の割合を企業規模別にまとめたものです。

●図従業員満足度の確認のための社内調査取組状況(従業員規模別)

1〜5⼈(n=1,393)     :行っている  22.0%   行っていない  78.0%

6〜20⼈(n=3,936)     :行っている 27.1%    行っていない 72.9%

21〜50⼈(n=3,376)    :行っている 31.4%    行っていない 68.6%

51〜100⼈(n=1,823)   :行っている3  4.7%    行っていない 65.3%

101〜300⼈(n=1,077)   :行っている  37.5%    行っていない 62.5%

301⼈以上(n=160)     :行っている  51.3%    行っていない 48.8%

従業員規模が大きい企業ほど、社内調査を行って従業員満足度を確認しています。特に、「301人以上」の企業では、過半数です。規模が小さくなるにしたがって、「行っている」が減少しています。規模が小さければ、あえて調査をしなくても一人ひとりの満足度を把握できると考える経営者が多いのかもしれません。

6.日常のコミュニケーションの取組状況別、中核人材・業務人材の定着状況

下記は、日常のコミュニケーションの取組状況別に、中核人材及び業務人材の定着状況を見たものです。

●2-1-34図中核人材・業務人材の定着状況(日常のコミュニケーションの取組状況別)

中核人材(間接員、スタッフ)とコミュニケーション

・日常のコミュニケーションを⾏っている(n=14,939)  
 定着している 74.6%   定着していない 25.4%

・日常のコミュニケーションを⾏っていない(n=1,577) 
 定着している  59.7%   定着していない 40.3%

業務人材(直接員、作業者)とのコミュニケーション

・日常のコミュニケーションを⾏っている(n=15,370)
 定着している 74.2%   定着していない 25.8%

・日常のコミュニケーションを⾏っていない(n=1,630)  
 定着している 57.7%   定着していない 42.3%

日常のコミュニケーションを「行っている」企業の方が、「行っていない」企業に比べて、中核人材・業務人材のいずれも定着する傾向にあるようです。このことから、社内調査といった大がかりな取組でなくとも、日常のコミュニケーションを取っていくことが、人材の定着につながり得ることが示唆されると白書では指摘しています。

人材確保では、採用後の定着に向けた取り組みも大事です。働き手のニーズとして、「やりがいを感じられること」、「自分のやりたい仕事であること」がある一方で、「資格や免許の取得に繋がること」や「⾊々な知識やスキルが得られること」など、自分の成長につながることがあることを踏まえる必要があります。人事関連では「賃上げ」や「専門性に応じた業務分担・配置」、働き方改革では、休暇制度の充実、労働時間の⾒直しが求められているようです。

従来は気にしなくてもよかったことが中小現場でも必要になってきました。お金も手間暇もかかることですが、やらなければ人材を確保できない時代です。日頃のコミュニケーションを大事にすれば、従業員の状況を把握できます。チームで仕事をする以上、成果を出すのに欠かせないのはコミュニケーションです。

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