戦略的工場経営ブログ生産性へプラスの変化をもたらす要因とは?

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日本の生産性がグローバルで劣後していると指摘されて久しいです。中小製造企業でも人時生産性向上は経営課題です、今の4,000円~5,000円台を6,000円台、7,000円台へと成長させたいのです。利益アップ、給料アップのためです。

中小企業白書2023年版では、生産性の変化要因を解説しています。業界でどんな企業が増えればプラス要因となるか?中小製造企業各社が生産性を高める取り組みを進めれば、業界全体も良くなるのです。生産性の現状と生産性の変化要因について説明します。出典は全て中小企業白書2023年版です。

1.中小企業製造業と大企業製造業の生産性
 2.企業規模別にみた労働分配率の推移
 3.生産性の変化要因
 4.労働生産性を高める要因と寄与度合い
 5.ゾンビ企業が生き残っていると国内生産性が高まらない

1.中小企業製造業と大企業製造業の生産性

下記は中小企業製造業と大企業製造業の2005年、2010年、2015年、2020年、2021年における一人当たり付加価値額(労働生産性)です。ここでいう大企業とは資本金10億円以上、中小企業とは資本金1億円未満の企業を指しています。

●中小企業製造業と大企業製造業の生産性
  中小企業製造業
  2005年 533万円
  2010年 524万円
  2015年 549万円
  2020年 520万円
  2021年 542万円

 大企業製造業
  2005年 1,418万円
  2010年 1,172万円
  2015年 1,307万円
  2020年 1,180万円
  2021年 1.460万円

大企業製造業は、2020年度から2021年度において労働生産性を向上させていますが、総じて、20年前と大きく変わっていません。中小企業製造業ではほぼ横ばいです。

この生産性推移に日本の生産性がグローバルで劣後している原因があらわれています。ここ20年大手も中小も、ほとんど上がっていません。

この数値が上がらなければ、経営者は従業員の給料を上げにくいのです。

2.企業規模別にみた労働分配率の推移

下記は労働分配率推移です。2010年、2015年、2020年、2021年における小規模企業、中規模企業、大企業の数値です。労働分配率は「企業が生み出した付加価値額のうち、どれだけが労働者に分配されているかを表す指標」と定義されています。

ここでいう大企業とは資本金10億円以上、中規模企業とは資本金1千万円以上1億円未満、小規模企業とは資本金1千万円未満の企業のことです。

●企業規模別にみた労働分配率の推移
  小規模企業
  2010年 85.4%
  2015年 82.3%
  2020年 86.5%
  2021年 91.0%

 中規模企業
  2010年 78.7%
  2015年 75.3%
  2020年 80.0%
  2021年 78.8%

 大企業
  2010年 58.7%
  2015年 52.8%
  2020年 57.6%
  2021年 52.4%

小規模、中規模の企業は大企業と比べて、高い労働分配率が続いています。また、2019年度から2021年度にかけて、小規模企業の労働分配率は上昇しています。労働生産性が上がらない中、少しでも給料を従業員へ払いたいとの経営者の想いが反映された数値なのかもしれません。

なお、整合性に欠けますが、参考までに、労働生産性に労働分配率を掛けて、一人当たり人件費を計算した結果を下記に示します。
・中小企業製造業の労働生産性×中規模企業労働分配率
・大企業製造業の労働生産性×大企業労働分配率

●企業規模別にみた労働生産性×労働分配率の推移
  中小企業製造業の労働生産性×中規模企業労働分配率
  2010年 524万円×78.7%=412万円
  2015年 549万円×75.3%=413万円
  2020年 520万円×80.0%=416万円
  2021年 542万円×78.8%=427万円

 大企業製造業の労働生産性×大企業労働分配率
  2010年 1,172万円×58.7%=688万円
  2015年 1,307万円×52.8%=690万円
  2020年 1,180万円×57.6%=680万円
  2021年 1.460万円×52.4%=765万円

労働生産性を高めないと給料が増えない状況が分かります。規模の大きい企業の給料が中小よりも多くなっているは中小と比較して高労働生産性になっているからです。

労働生産性が50%台でも人件費の規模を確保できています。また、総じて10年間の人件費の規模感推移から給料が上がっていない状況も分かります。

3.生産性の変化要因

賃上げ・所得の向上を継続的に図るためには、分配の原資となる収益拡大、さらには付加価値(生産性)を増大させることが重要です。生産性の変化は企業のライフサイクルの変化にも左右されます。

白書では我が国の経済活動における生産性の変化要因を開業、成長、倒産・廃業といったライフサイクルの構成要素に従って整理しています。

我が国経済における生産性の変化要因について、開業や成長、倒産・廃業等のライフサイクルの構成要素から明らかにした金・深尾・権・池内(2023)の最新の研究結果によります。

生産性の変化要因を4つに分解しています。
 ①市場参入による効果
 ②資源の再配分による効果
 ③企業内部の生産性変化による効果
 ④市場退出による効果

①市場参入による効果

企業が起業・創業等によって市場に新規参入をした効果です。新規参入した企業の生産性が業種平均より高い場合には、「市場参入による効果」は生産性をプラス方向に押し上げます。

②資源の再配分による効果

存続企業のシェアの変化による寄与度です。存続企業として、業種平均より生産性が高い企業が売上シェアを拡大した場合や、生産性が伸びる企業が売上シェアを拡大する場合、「資源の再配分による効果」は生産性をプラス方向に押し上げます。

③企業内部の生産性変化による効果

存続企業における生産性の水準変化のみによる寄与度です。存続企業が生産性を高めた場合、「企業内部の生産性変化による効果」は生産性をプラス方向に押し上げます。

④市場退出による効果

倒産・廃業等によって企業が市場から退出した効果です。市場から退出する企業の生産性が業種平均より低い場合に、「市場退出による効果」は生産性をプラス方向に押し上げます。

4.労働生産性を高める要因と寄与度合い

中小企業庁(2017)によると、「労働生産性の上昇率=全要素生産性の上昇率+資本分配率×資本装備率の上昇率」が成り立つとしています。

全要素生産性とは、2017年版中小企業白書によると、「資本や労働といった生産要素の投入量だけでは計測することのできない全ての要因による生産への寄与分」です。

白書では、中長期的な生産性の向上の観点からは、全要素生産性を安定的に上昇させることが重要であると指摘しています。

下記は、この全要素生産性を高める要因毎に生産性向上への寄与度合いです。全要素生産性を高める要因は先に挙げた4つです。
①市場参入による効果
②資源の再配分による効果
③企業内部の生産性変化による効果
④市場退出による効果

下記は2018年から2021年における、中小企業製造業の全要素生産性変化要因です。

●中小企業製造業の全要素生産性変化要因
  ①市場参入による効果 0.1%
  ②資源の再配分による効果 0.4%
  ③企業内部の生産性変化による効果 0.3%
  ④市場退出による効果 -0.1%
  合計 0.6%

全要素生産性変化はプラス0.6%と生産性をプラス方向へ押し上げる要因があったことを示しています。最も大きいのは④資源の再配分による効果0.4%です。
・存続企業として、業種平均より生産性が高い企業が売上シェアを拡大した
・存続企業として、生産性が伸びる企業が売上シェアを拡大した

こうした要因の寄与度が高かったということです。勢いがある企業の占有率が高まれば業界の生産性が高まります。

次は③企業内部の生産性変化による効果0.3%です。
存続企業が生産性を高めた
これは製販一体で効率よく造ることに頑張った成果と言えそうです。工場ではイノベーションを推し進めます。機械化、自動化、無人化、設備化ばかりでなく、管理技術としての仕組み化の成果も含まれます。

なお、④市場退出による効果 -0.1%となっています。マイナスです。市場から退出する企業の生産性が業種平均より高い場合にはそうなります。業界平均より高いのに市場から撤退しなければならないことがあるのは残念です。

5.ゾンビ企業が生き残っていると国内生産性が高まらない

勢いのある企業が増えて、その企業が市場での占有率をドンドン高めてくれれば、日本の生産性は高まります。低生産性で収益力が低いゾンビ企業が生き残っていると国内の生産性は高まりません。

ただ、そもそも、そんなゾンビ企業が命脈を保てるほど中小製造業界は甘くないので、そうした企業は自然と無くなっていきます。したがって、今、中小製造企業に求められるのは、各社が生産性を高める工夫を重ね、ドンドン市場へ進出し、占有率を高めることです。

生産性を高めれば、競争力が向上するので、そうなるはずです。下請けモデルであっても知恵を絞って、工場の内でも外でも、生産性を高める持続的な活動を展開したいのです。

頑張っていきましょう!

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