戦略的工場経営ブログロードマップを活かすにもやり方がある

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1.ロードマップを持つこと

弊社はご支援先の経営者の方々に「ロードマップ」をお伝えしています。製造業でロードマップを持つことのメリットを経験で知っているからです。

製造業は技術の世界で戦っています。技術革新と競合追い上げの2つに晒されているのが製造業です。我が社の事情に関係なく、業界はドンドン前へ進んでいます。グロバールでならなおさらです。

経営者が従業員と一緒になって目の前の仕事をこなしているようでは置いてぼりを喰います。経営者の今とは3年先、5年先を考えることです。技術開発、製品開発、商品開発、それだけの時間がかかります。

大手自動車部品工場勤務時代、お客様から要望された新製品を製造する新技術を開発し、事業化するまで丸々3年かかりました。今から25年ほど前のことです。

当時でもそれだけかかりました。モノづくりが高度化、複雑化している昨今、このあたりは、ますます時間の勝負になってくるのは想像に難くないです。

製造業では2つの取り組みを平行して進めなければなりません。
・今のための取り組み
・将来のための取り組み

前者の仕事は右腕役、現場に任せます。経営者の主戦場は後者です。

将来のために今、やらなければならないことをやります。新規事業、新規顧客、新技術、新商品、新製品、生き残るための新たなビジネスモデルを考えることです。

マイルストーンでチェックをします。

経営者だけでなく、幹部や従業員のための道具でもあるのです。
・納期遵守以外の仕事があること。
・それは生き残るために必要であること。

時間軸と共に示しめします。

ロードマップは自分の人生を掛けた我が社の将来を語るものです。興味を持たない従業員はいません。会社のために頑張ることは、すなわち自分のためにもなるからです。

経営の頭の中は経営者が考えているほどには従業員は理解できていません。ご支援先の現場でそのことを感じます。ですから我が社の将来を文字と数字で示すのです。

中小企業白書2022年版には、経営戦略、経営理念、経営計画の活用状況についてアンケート調査した結果が掲載されています。対象の業種は製造業だけではなく、全業種です。以下、中小企業白書2022年版のデータによります。

2.事業領域を見直した経験の有無

ロードマップがあれば、現在の立ち位置が分かります。これがあれば事業モデルを進化させることがやり易いです。比べられるからです。考えることとは比べること。比較対象がなければ、よほどの天才でないかぎり知恵は出ません。

現在、経営計画をつくっている経営者を対象に、過去に事業領域の見直し経験があるかを問いました。

事業領域とは「どのような顧客に、どのような価値を、どのような技術によって提供するのかで定まる、事業を行う領域のこと」です。

ビジネスモデルの見直しをやったことがあるかどうか?ということです。現時点のビジネスモデルに言及した経営計画を持たない経営者は比べられません。

●事業領域を見直した経験の有無 (n=5,188)
経験がない  64.0%
経験がある  36.0%

先代から引き継いだビジメスモデルをそのまま継続している経営者が多いのかもしれません。日本の労働生産性が低迷している原因に、そもそも儲からない市場に身を置いて、従来のやり方を続けていることが考えられます。

せっかく作った経営計画です。現在の立ち位置と儲かる市場を比べられます。ご自身のビジネスモデルは見直したいです。今も将来も儲かるなら問題はありません。

3.事業領域見直し時に重視した点

先のアンケート結果で「事業領域を見直した経験が有る」と回答した経営者を対象に事業領域の見直し時に重視した項目を問いました。

●事業領域見直し時に重視した点 (n=1,841)
・既存事業の技術・ノウハウがいかされる  67.3%
・市場規模が大きい・市場規模の成長性が見込まれる  42.0%
・製品・サービスを提供するチャネルがある  34.2%
・知名度・信用力がいかされる  28.1%
・競合が少なく、価格競争に陥りにくい  27.8%
・多額の投資を必要としない  24.7%
・連携相手がいる  19.6%
・必要な認可などを取得している  16.1%
・官民問わず支援が充実している  3.7%
・分からない  2.9%

製造業で儲ける要点のひとつに「技術は集中、お客様・商品は広く」があります。コア技術戦のことです。これを意識している経営者が多くなっています。経営資源に制約がある中小ならなおさらです。

また、2番目、3番目の項目にも納得できます。そもそも儲かる市場に身を置いていないと儲かりません。残存者利益戦略もありますが、まずは儲かっているお客様を選んでお付き合いするのです。

さらに、そこに接触する手段がなければ、どうしようもありません。多くの中小製造企業経営者が苦手とする売る仕組みです。ご支援先でも課題となっています。

4.経営戦略の見直し頻度別、労働生産性の水準

せっかく作った経営計画書です。大いに活用したいところですが、意外と作りっぱなしという経営者も少なくないようです。

そこで、白書では経営戦略の見直し頻度別に、労働生産性の水準を整理しています。興味深い調査です。

●経営戦略の見直し頻度別、労働生産性の水準(2019-2020年平均の中央値:千円/人)
・少なくとも年に1回は見直しを行っている (n=2,650)  6,978
・毎年の見直しは行っていないが、定期的に見直している (n=578)  7,012
・策定・見直ししていない (n=1,029)  6,342

注釈1
労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費+賃借料+租税公課)÷従業員数

2注釈2
労働生産性の水準とは、2019年及び2020年の2か年の平均値を算出し、その中央値を集計したもの。

注釈3
「少なくとも年に1回は見直しを行っている」は「四半期ごと」、「半期ごと」、「毎年」の合計。「毎年の見直しは行っていないが、定期的に見直している」は、「3年程度に1度」、「5年程度に1度」の合計。

経営戦略の見直しを行っていない企業と比べ、見直しを行っている企業の方が労働生産性の水準が高い傾向にあります。

見直しとは、作成した経営計画と市場変化を突き合わせて今の立ち位置を知ることです。作りっぱなしの経営者とくらべれば感度が高い経営者です。差が出るのも当然かもしれません。作りっぱなしであっても、全くつくらない経営者よりアドバンテージがありますが、せっかく作成した経営計画は地道に生かしたいです。

5.経営戦略の浸透度別、労働生産性の水準

経営戦略、経営戦略をつくっても、床の間に飾るような使い方ではもったいないです。右腕役、幹部、現場キーパーソン、作業者に浸透させます。

我が社の将来=自分の将来です。従業員が興味を示さないわけがありません。経営者の頭の中を大いに知ってもらうべきです。

そうすれば、経営者がいちいち指示しなくても数値が代わりに経営者の意志や意図を語ってくれます。経営者は楽です。

白書では経営戦略の浸透度別に、労働生産性の水準を整理しています。これも興味深い調査です。

●経営戦略の浸透度別、労働生産性の水準(2019-2020年平均の中央値:千円/人)
・全社的に浸透している (n=867)  7,403
・主任・係長クラスまで浸透している (n=524)  6,994
・部長・課長クラスまでは浸透している (n=1,252)  6,755
・経営層までは浸透している (n=749)  6,526
・浸透していない  (n=845)  6,356

注釈1
1.労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費+賃借料+租税公課)÷従業員数

注釈2
2.労働生産性の水準とは、2019年及び2020年の2か年の平均値を算出し、その中央値を集計したもの。

注釈3
3.「浸透していない」は、「浸透していない」、「分からない」の合計。

この浸透後は経営者側から評価したものです。従業員側がどう考えているかは不明ですが、少なくとも経営者が「浸透している」と感じている企業の労働生産性は高くなっています。

経営者側の評価とは言え、浸透度合いと労働生産性に相関があるのは注目に値します

貴社の経営計画はどこまで浸透していますか?経営計画が浸透していれば、経営者の代わりに経営計画が従業員、一人ひとりがやらねばならないことを語ってくれるのでベクトルは揃いやすくなります。

6.KPIの社内における認識状況別、労働生産性の水準

ロードマップ、経営計画書で取り上げる数値は2段階で考えます。

経営指標と現場指標です。

数値は実感が伴わなければ指標になりません。経営者が作業者に向かって売上高や
営業利益、費用を訴えても、具体行動に結びつかないのは実感が伴わないからです。実務に直結する数値を指標にします。

サイクルタイム、リードタイム、作業時間、段取り時間、工数、不良率、手直し率。こうした収益につながる現場指標(KPI)がどれだけ、共通用語として語られているかは大事です。正常、異常を客観的に判断できれば、やることがはっきりします。

貴社では経営指標と現場指標がバランスよく設定されていますか?

白書では社内におけるKPI認識状況別に、労働生産性の水準を整理しています。

●KPIの認識状況別、労働生産性の水準(2019-2020年平均の中央値:千円/人)
管理職の多くと従業員の多く (n=160)  8,321
管理職の多くと従業員のある程度 (n=387)   7,085
上位管理職(部長、店長など)まで (n=481)  6,944
経営層のみ(n=248)  6,456

注釈1
1.労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費+賃借料+租税公課)÷従業員数

注釈2
2.労働生産性の水準とは、2019年及び2020年の2か年の平均値を算出し、その中央値を集計したもの。

これも先の経営戦略の浸透度別に見た、労働生産性の水準と同様の結果になっています。

経営目標を達成するため、各種活動が順調に進んでいるかどうかを示す指標が現場指標(KPI)です。これらを従業員の多くが認識すれば、具体行動のベクトルは揃え易くなります。その結果、企業業績にプラスの効果が生まれるのです。

7.ロードマップを活かす

せっかく作った経営計画書、ロードマップは生かさないと損です。
・ビジネスモデルは常に見直しを考える。今のモデルしかないと思い込まない。
・経営戦略、経営計画を従業員へ浸透させる努力を続ける。経営者は楽ができる。
・経営目標を達成するための現場指標を設定する。現場のベクトルが揃いやすくなる。

弊社のご支援先の経営者はロードマップを手に事業を展開しています。20ページほどにガッチリ記述がある計画書、5ページほどでスッキリまとめた計画書、A3ヨコ一枚の計画書。目的はご自身の想いをもれなく従業員に伝えることです。文字と数字で語らせます。

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