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1.競争しない競争戦略

 中小製造企業の取るべき戦略は「競争しない競争戦略」です。

 国内市場は成熟化し、加えて少子化、人口減少で、市場そのもの規模が縮小しつつあります。競合と同質化した製品で競争していると、行きつくところは価格競争。体力がもちません。

 

 自動車部品業界に携わったとき、家電業界ほどではないですが、値下げ要求の厳しさを経験しました。

 自動車メーカーは部品安定購買のために、同一部品で複数のサプライヤーと取引するわけですが、その結果、比較対象を多数持つことになります。すると、どうするかは小学生でもわかります。

 

 自動車部品ですから、相当の受注量が確保されるので、魅力的ではあるのですが・・・・。価格競争があっても、安定した受注量をある程度見込める製品は一見、頼もしくも感じますが、それに依存した収益構造では、親亀こければ、皆こけたになります。

 こうした製品を持ちつつも、価格の決定権を自ら握る戦略を柱としたいものです。簡単なことではないですが、だからと言って、価格競争を主戦場としていては、もっと辛くなります。

 

 

 

 

 

2.価格弾力性

 価格弾力性という言葉があります。価格が変わったとき、需要や供給がどの程度増減するかを示す指標です。

 例えば、ある製品の価格を10%値上げします。

 ・その結果、需要が10%減れば、需要の価格弾力性は「1」です。

 ・その結果、需要が20%減れば、需要の価格弾力性は「2」です。

 需要の価格弾力性が1を超えると消費者は値上げに敏感だと考えます。

 

 ・・・・というのが価格弾力性の説明ですが、これではそもそも、価格弾力性を取り上げた背景がわかり難いです。そこで・・・・、やっぱり図ですね、図で感覚的に確認です。

 横軸が需要、縦軸が価格です。製品Aと製品Bを比べます。値上げ前は図中のP点です。価格はP1です。価格をP2へ値上げします。

 するとP点では、需要が一致していた製品Aと製品Bですが、値上げすると需要の減少幅に違いが出ました。値上げ幅は製品Aも製品BもP2-P1と同じですが、需要の減少幅は、製品Aの方が明らかに大きいです。

 ・製品Aは製品Bよりも価格弾力性が大きい

 ・製品Bは製品Aよりも価格弾力性が小さい

 

 つまり、経営者が望む「競争しない競争戦略」の方向性がこの図に示されています。

 製品Aと製品Bを比べれば明らかです。

 ・製品Aと製品B、具体的にはどんな製品が思い浮かびますか?

 ・そして、どちらの製品なら価格競争から抜け出せそうですか?

 

 この答えがそのまま、貴社のモノづくり戦略に反映されるはずです。

 

 

 

 

 

3.価格競争から抜け出すカシオの新製品

 電気・精密各社では、自社の固有技術を医療に応用する動きが相次いでいるようです。

 

 カシオ計算機は昨年の5月にデジカメ市場に再参入しました。開発したのはレンズを皮膚に接触させ、ほくろなどを撮影するコンパクトカメラです。

 価格は約20万円でかなり高額ですが、ほくろが悪性腫瘍でないかどうか判断するのに役立つとして、皮膚科医から注文が相次いでいます。さらに口コミで話題となり、化粧品大手も関心を寄せているとのことです。

 

 カシオは世界で初めて液晶モニターを搭載したデジカメを発売しました。1995年のことです。新たな市場分野を創出したわけです。しかし、デジカメ市場のその後はご存じの通り。

 2018年にデジタル事業から撤退をしました。そして、昨年、再参入を果たしたというわけです。

 

 デジカメ市場へ再参入するにあたり、凸凹した病理学的な皮膚表面の異常をピンボケさせないで連続撮影する技術に、消費者向けデジカメで長年蓄積したノウハウを活用しています。既存技術を医療へ転用して、新たな収益源にしようとしているのです。

 開発したデジカメが20万円でも売れるように、医療分野では中国や韓国勢との価格競争が起きにくく、長期にわたって価格を維持できる可能性があると同社では考えています。この製品の市場の競争軸は価格になっていないのです

 ソニーもブルーレイ・ディスクのレーザー技術を細胞分析装置に生かそうとしています。医療分野は消費者向け市場とは違った競争軸で戦えそうです。

(出典:日本経済新聞2019年11月8日)

 

 デジカメや光ディクスは技術や市場がもはや成熟しています。消費者向け市場で中国、韓国と戦っているかぎり、競争軸は価格になり、消耗戦です。

 そこで、土俵を変えれば、既存技術の転用、応用で儲けを生み出せるかもしれません。

 ・消費者向け市場のデジカメは医療向け市場のデジカメよりも価格弾力性が大きい。

 ・医療向け市場のデジカメは消費者向け市場のデジカメよりも価格弾力性が小さい。

 

 医療向け市場のデジカメは値上げをしても需要を大きく落とすことはなさそうです。価値を認めている皮膚科医が顧客であり、そもそも、競合製品がほとんどありません。「高額」を維持できそうです。

 一方。消費者向け市場のデジカメは競合がひしめいているうえに、いわゆる「顧客ニーズの頭打ち」なので機能面での差別化は難しくなっています。代替品がいくらでもあるので、顧客に選ばれる判断軸は価格です。値上げをしたら、大きく需要を減らします。(一部のマニアックな商品は除いて・・・)

 

 貴社のモノづくり戦略で、どちらの製品を目指すかは言うまでもないことでしょう。

 価格弾力性が小さい製品で価格の決定権を握るのです。

 

 弊社のご契約企業様の中にも、新規市場として、医療分野へ挑戦しているところがいくつかあります。正解のない問題へ挑戦する果敢さがなければ脱価格競争は望むべくもありません。

 

 

 

 

 

4.価格以外で顧客に選ばれて付加価値額を積み上げる

 儲かる工場経営の要諦は「顧客に選ばれる製品を効率よく造る」ことです。兎にも角にも、まずは顧客に選ばれなければ、どうしようもないわけですが、ただし、顧客の判断基準が価格では辛くなります。

 安定した受注が期待できるなら、(辛いことには変わりはないですが)コスト削減に焦点を当てて、値下げに対応しながら、量をこなせば、なんとか収益を確保できるでしょう。従来の仕事のやり方です。

 

 しかし、今は違います。

 付加価値額を生み出す「受注」そのものを確保すること自体が難しくなってきました。従来のように、顧客に言われるがままに製品を造り、シコシコとコスト削減だけで乗り切ろうとしても、早晩行き詰まります。

 手間暇に見合った儲かる価格を自ら決める商売の仕方を考えたいのです。付加価値額を積み上げるには?という発想が求められます。デザインインやスマイルカーブ、多工程プロデュースなど、(外)の活動を現場と連動して進めることです。

 

 

 

 

 

5.労働生産性の伸び率が4分の1

 2019年中小企業白書によると、2009年と2017年の企業規模別従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)は次のようになっています。

 

 大企業製造業

 2009年 999万円   2017年 1,403万円

 

 中小企業製造業

 2009年 501万円   2017年   556万円

 

 2009年はリーマンショックの翌年です。そのリーマンショック明けの2009年から2017年までの8年間の伸び率には、歴然とした差があります。大企業製造業では40%伸びていますが、中小企業製造業では10%強です。

 伸び率がほとんど4分の1。これでは大手と中小の格差は広がるばかり・・・・・・。これはそのまま、給料の伸び率にも反映されます。中小製造企業の労働分配率がほぼほぼ7割で推移していることを踏まえるとそうです。

 

 従来の仕事の延長線上で伸ばそうとしても無理であるのははっきりしています。下請け型のビジネスモデルでは、私たちの価格はそのまま、顧客の原価です。

 したがって、貴社製品に価値を見出さない顧客は人工しか見ません。これでは儲かるはずがないのです。儲けるには人工単価をあげるしかありません。

 

 中小現場の管理者時代、こうした現場がありました。攻めようがなかったことを覚えています。それでも、いろいろと策を練り、顧客の懐に飛び込んで、人工単価アップに取り組んだわけですが、制約が多すぎました。

 したがって、削減して、無駄を省いて・・・では飛躍ができませんし、できたとしての限定的です。

 

 

 

 

 

6.製販一体で顧客視点で考える

 付加価値額を積み上げます。コスト削減が無意味だと言っているわけではありません、それだけでは飛躍が限定的だと言っているのです。削減に加えて、積み上げる思考回路を持ちたいのです。

 そこで、価格弾力性を小さくするには何ができるだろうか?と考えます。結局、顧客視点で儲けろということです。

 

 効率よく造ることだけやっていればいいだろうという現場は生き残れません。健全な危機感を現場と共有して知恵を絞りたいのです。現場には、内側だけではなく、外側へも視線を向けさせる必要があります。

 給料はお客様からいただいているので、当然のことなのですが。至極当然なことに気付いていない現場が意外と多いとも感じています。

 顧客視点を現場へ導入し、製販一体で「ウチにとって、価格弾力性の小さい製品とはどんなのか?」と考えてみてはどうでしょうか?

 

 弊社のご指導では、生産性向上活動に取り組む前のベクトル合わせを重視していますが、例えば顧客視点で自社製品のことを考えるのは、一体化のきっかけとなっています。自分たちが造っている製品を、内側からではなく、外側から見ると意外と新鮮です。

 

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