IOTの事前準備として、”今”を把握できていますか?
優先して把握すべきこととは何でしょうか?
段取り作業や段取り時間は標準化されていますか?
1.IOTを成功させるためにやらねばならないコト
工場のスマート化の目的は生産効率の向上やカスタマイズ化への移行です。
そのためには、まず”今”を知ることです。
高度化するICTをいかに活用しようか?
どのような成功事例があるのだろうか?
自社工場へどのように適用すれば上手くいくだろうか?
IOT(もののインターネット)では、こうした情報に意識が向きがちです。
しかし、優先すべきは、”今”を把握すること。
まずは、自社工場では何ができて、何ができないのか、現状を把握することです。
そしてスマート化の目的を明確にします。
まずは、足元を見つめることです。
「ITの導入の効果が得られた理由」(複数回答)に関するアンケート結果を下記に示します。
小規模事業者と中規模事業者を対象にしています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が実施しました。
小規模事業者284社、中規模事業者723社の結果が下表です。
(出典:2012年11月三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株) 2013年版中小企業白書)
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小規模事業者 |
中規模事業者 |
ITの導入の目的が明確だった |
37.3% |
31.3% |
経営層が陣頭指揮を執った |
36.6% |
27.7% |
システムの仕様を十分に検討した |
21.1% |
29.6% |
業務プロセスの見直しを行った |
19.4% |
29.9% |
現場が積極的にシステム検討に参加した |
13.0% |
27.2% |
ITの導入を段階的に行った |
18.7% |
20.3% |
外部のコンサルタントを活用した |
10.9% |
13.4% |
情報システム会社との意思疎通が円滑だった |
8.8% |
15.5% |
どのような視点が抜けると失敗するかが分かります。
この結果より
・ITの導入の目的・目標があいまい
・経営陣が現場へ丸投げ
・システムの仕様検討が不十分
・業務プロセスの見直しをしない
このような場合、IT投資で失敗のリスクが高まります。
これを避けるには、”今”を知ることです。
そのためノウハウの体系である「標準化」は欠かせません。
既存の生産ライン、設備を使い尽くすことも大切です。
また、イノベーションに向けた自律性を評価する風土を醸成したい。
(IOTに乗り遅れないためやっておくべき2つのコト)
(標準作業を持たない現場はスマートにはなれない)
一方でインダストリー4.0、スマート工場の動向にも注目です。
我々中小モノづくり工場でやるべきことが見えてきます。
2.ドイツのインダストリー4.0
ドイツはインダストリー4.0で、モノづくりの付加価値を高めます。
従来の大量生産からマスカスタマイゼーションへ移行することを決意しました。
マスカスタマイゼーションはドイツ製造業の生命線です。
モノづくり産業の命脈を保つためには、付加価値を高める戦略しかありません。
ですから、多品種少量生産、変種変量生産に対応できなければなりません。
そこで、今のドイツが目指しているスマート工場では、2つが挙げられています。
「人とロボットの協業」
「生産設備のモジュール化」
2-1.人とロボットの協業
マスカスタマイゼーションでは、生産ラインで扱う製品仕様数が大幅に増加します。
それに伴い、原材料の種類、加工仕様、組み付け部品の種類等が増えます。
生産プロセスが複雑化します。
したがって、現場作業者の判断力・識別力にのみ依存した生産ラインではムリが生じます。
こうした状況は品質低下やクレームに直結するのでヨロシクないです。
人間の柔軟性を残しながら、属人的な部分を何らかの手段で補うことが必要です。
新たなロボット(自動化)の使い方を描く必要があります。
ドイツでは、人とロボットが協業する場合、
ロボットの稼働速度を安全なレベルにまで下げることが、法律で求められています。
ただし、速度低下分、効率が低下します。
このままでは、生産ラインへの導入が難しいです。
したがって、多くの生産現場では、ロボットを柵で囲って人とロボットを分離しています。
ロボット単独稼働ならば、稼働速度を高められます。
このあたりも、日本の事情と似ています。
ただし、これでは多品種生産の場合、段取りばかり発生し効率のよい対応ができません。
そこで、ドイツでは、法律による規制を緩和しつつ、
人間とロボットが至近距離で対話しながら仕事を進めることを目指しています。
それぞれの良さを活かす協業のスタイルが検討されているのです。
具体的には下記のような事例があります。
マスカスタマイゼーションでは、生産ラインをめまぐるしく変化させなければならない。
造るモノに合わせる必要がある。
人は柔軟に対応できるが、特定の場所に固定されたロボットは難しい。
そこで、自律走行する台車にロボットを搭載した。
人と向かい合わせになって連携しながら作業する双腕型のロボットを活用する
人にぶつかった衝撃を感知すると数ms以内に動作が止まる。
(出典:日経ものづくり2015年6月号)
2-2.生産設備のモジュール化
マスカスタマイゼーションに対応するため、
生産設備を簡便に入れ替えるのを可能にする考え方です。
レゴブロックのように自由に交換可能で、
ネットワークに接続したら、ただちに稼働ができる生産設備を想定しています。
「プラグアンドプレイ」で交換できることが特徴です。
現在のパソコンの周辺機器にも同様な機能があります。
昔、周辺機能をパソコンに認識させるために
一度、パソコン本体の電源を落として、再起動させる必要がありました。
生産設備でこれをやっていたら、効率が悪くてしょうがないです。
一部分の設備を交換する度に、生産ラインを止めなければなりません。
今、ドイツでは、
こうしたコンセプトに沿った生産ラインや生産設備の開発が進んでいます。
それも多数の企業が参加して進めています。
そうなると当然、設備と設備の接続部となるインターフェースの共通化が課題です。
インターフェースに関して、接続部の形状や通信の標準化をベースに検討を進めています。
日本は出遅れているので、このあたりの動向が、今後、気になります。
(出典:日経ものづくり2015年6月号)
3.現場では何に着目するのか
ドイツが目指すインダストリー4.0の2つのコンセプト。
「人とロボットの協業」
「生産設備のモジュール化」
これで狙うのは柔軟性のある生産ラインです。
・柵で囲われ隔離されていたロボットを人間と同居させ、切り替えの柔軟性を高める
・製品に応じた設備の入れ替えの柔軟性を高める
つまり、「段取り時間を究極まで短くする」ことです。
生産リードタイムの短縮がその本質です。
特注生産は個別生産の形態をとります。
規格品受注生産や見込生産で実施される連続生産に比べれば納期は長くなる傾向にあります。
マスカスタマイゼーションは、
・カスタマイズ化
・大量生産並みのコスト
が目標です。
したがって、いかに短時間で出荷できる状態に至るかがカギになります。
どんな種類の製品が生産ラインに流れていてもです。
そのように考えると、「段取り時間を極限まで短くする」が、現場の究極の課題となります。
日本が直面している問題はドイツと似てはいます。
国内での少子高齢化と国外の新興国による追い上げ。
政府が主導し国を上げて取り組くんでいるドイツの動きは参考になります。
したがって、目指すべき状態の工場を描く手がかりになります。
”今”を知るという論点のなかでも、「段取り作業」は重視すべき項目です。
段取り作業をしっかり把握し、今から見直しを進めます。
「その時」になったら、真っ先に役に立ちます。
生産リードタイムの短縮がその本質だからです。
「人とロボットの協業」「生産設備のモジュール化」。
これら2つのコンセプトを実現させるために必要です。
段取り作業を見直し、短縮する体制を強化しませんか?