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顧客から時間で評価されない、存在そのものに価値を認めてもらえるサービスを

創出し、付加価値を生み出す、という話です。

 

1.サービスを考えるときに持つべき視点

モノづくり現場では、起きている現象の因果関係を科学的、工学的に説明できる

状態を目指します。

現地、現物、現実の三現主義の基本となる考え方です。

 

そして、科学的、工学的な因果関係を説明するのに必要なことが2つあります。

科学的、工学的な知識と考える訓練です。

なぜなぜ分析で問題の本質を知る

 

その意味で「なぜなぜ分析」は現場に定着させたい手法であり、モノづくりに臨む

上での望ましい”姿勢”と考えています。

 

技術イノベーションや新たな付加価値を生み出すためのヒントを獲得するきっかけ

になるからです。

 

「モノ」だけに着目した事業展開では成長が限られ、グローバルにも、ローカル

にも「コト」へ意識を向けることが継続的な発展に不可欠となってきます。

 

「サービスの提供」は具体的な取り組み方針のひとつです。

中小モノづくり現場が目指したい事業形態のひとつに「問題解決型」があり、

これも広い意味では「サービスの提供」になります。

 

モノづくりを主業としている以上はコア技術は絶対です。

コア技術抜きのモノづくりはあり得ません。

したがって、「サービスの提供」を検討する時には、当然にコア技術を軸にして、

その周辺でのサービス提供を考えます。

 

そして、さらに重視すべきなのは提供するサービスの質です。

顧客から時間で評価されない、存在そのものに価値を認めてもらえるサービスを

創出しなければ付加価値の拡大にはつながりません。

 

例えば、設備メーカーでは、従来から設備のメンテナンスサービスをユーザーに

提供しており、具体的には、定期メンテや清掃、消耗品の交換などの作業を提供

しています。

 

こうしたサービスは設備購入当初は無料ですが、1年、2年後からは有料となる

のがほとんであり、多くの中小モノづくり現場でも活用していると思われます。

 

私も現場の管理者時代には現場の設備(切削加工機、研削機、鍛造機等など)の

メンテナンスサービスを経験しました。

そして、そのサービスの費用は工数評価で決定されるのがほとんどです。

人数×実労働時間+宿泊代+旅費

多くの場合、こうして費用を決定しているはずです。

 

こうしたサービスを受ける側として、当然に考えることは、実労働(工数)に

見合ったサービス(価値)を受け取ることができたかどうかです。

 

このようなことがありました。

ある加工機メーカーでメンテナンスの工数が2人×2日(8時間×2)で見積もら

れ、その見積もりに沿ってメンテナンス要員が送り込まれてきたことがあります。

 

現場リーダーにフォローを任せたのですが、実務上のメンテナンス作業は1.5日

で終了したようで、残りの0.5日は設備の清掃に時間を費やしていたとの報告が

ありました。

 

こちらとしては、自社でできないメンテナンス作業にこそ費用を支払うつもり

でしたから、そもそも契約していない清掃分はねぇということで、費用評価の

やり直しの交渉をしました。

 

メーカー側でも実費がすでに発生していることもあり、結局、清掃作業を含めた

メンテナンス費用を支払いました。

 

こうした感覚は、メンテナンスを定期的に有料でメーカーへ依頼している現場で

あるならば理解ができるでしょう。

 

つまり、サービスを時間単価で提供すると、顧客の意識は提供されるサービス

内容よりも、費用に直結する工数の大きい小さいという方に意識が向きがちです。

 

少しでも早く、安くあげたい費用なので、付加価値という発想は顧客の方へ

期待してもかなり困難。

したがって、付加価値を拡大する水準の事業にはなりにくいと考えるべきです。

 

だから、提供するサービス自体に価値を認めてもらえる状態を目指します。

是非、ウチでも使いたい、取り入れたいと思われるサービス。

工数がどれ程かかろうが関係なし、費用も関係なし、とにかくそのサービスを

活用してみたいと、その顧客に思わせなければなりません。

 

代替えがあり、時間で評価され、競合も真似しやすい事業では絶対にそうはなり

ません。

 

付加価値を生む水準の事業では、顧客現場で起きている困りごとの因果関係を

科学的、工学的に明らかにする水準が求められます。

 

 

 

2.株式会社ヤマナカゴーキン

株式会社ヤマナカゴーキンは、資本金8,500万円、従業員は国内230名、

海外240名で東大阪市に本社を置く金型メーカーです。

 

同社では鍛造用金型の製造を事業のコアにして、開発ソリューション、計測

ソリューションの事業を展開しています。

 

計測ソリューションとして、「ボルト型センサー」があります。

これで、ボルト内部にピエゾセンサーを埋設しボルトの締結箇所における負荷

荷重を感度よく計測します。

 

ピエゾセンサーとは圧電効果を活用したセンサーです。

水晶や特定のセラミックなどへ圧力を加えると、結晶が変形することに応じて

電圧が生じる現象を活用しています。

(ちなみにこの圧電効果は女性初のノーベル賞を受賞したキュリー夫人の夫で

あるピエール・キュリーと兄のジャック・キュリーが発見したそうです。

優れた方々の仕事は多方面にわたります。)

 

同社では、自社開発したこのセンシング技術を生かし、HPにて

「量産工程における加工状態をモニタリングするシステムを提案します。」

と謳っています。

 

多くのモノづくり現場では量産行程における製品の加工状態をリアルタイムに

知りたいものです。

 

不良品への事後対応は選別作業のリスクが高まるので、可能な限り早い段階で、

品質上の不具合を知りたい。

 

しかしながら、量産しながら製品から直接にそうした情報をつかむことが難しい

のも現場は知っています。

 

そこで、同社は、

製品品質→金型にかかる負荷の大きさと荷重パターン→締結ボルトへの負荷荷重

との因果関係に着目し、製品品質を締結ボルトへの荷重状況から”読み取る”

システムを提案しています。

 

HPでは具体的な事例として2つ挙げています。

1)押し出し成形

締め付けボルトの負荷が高まる → 潤滑条件の不備 → 焼き付き、カジリ

2)ロールフォーミング

締め付けボルトの負荷パターン → 材料別の最適加工条件

こうした工学的な因果関係の知見を生かした結果です。

 

主業である金型を製造販売しつつ、製品品質を読み取ることができるシステムも

提供しています。

 

システムに価値を見出した顧客は、価格二の次で同社のノウハウを買うことで

しょう。

こうした状況を目指したいです。

 

自らは売り込まずとも顧客の方から求められるサービス事業を目指します。

 

また、ボルト内にセンサー本体を埋め込んだあたりに現場を知っている同社の

工夫が感じられます。

 

生産現場では予期せぬ外乱が多いです。

センサーを取り付けても治工具をぶつけて破損させたとか、センサーが粉塵や

油分でお釈迦になってしまったとか、そうしたトラブルの枚挙にいとまがないです。

デリケートなセンサー部をボルトに埋め込み、そうした外乱からセンサーを

守り耐久性を上げて、計測の信頼性を上げています。

現場の実情を理解しているサービスは、現場の困りごとにしっかりと応えます。

 

存在そのものに価値を認めてもらう水準のサービスでは、顧客現場の困りごとを

工学的な因果関係で解決させます。

 

そうした事業を育てるのに「なぜなぜ分析」の考え方は有効です。

因果関係を明確にすることこそ、「なぜなぜ分析」のねらいだからです。

 

 

まとめ。

顧客から時間で評価されない、存在そのものに価値を認めてもらえるサービスを

創出し、付加価値を生み出す。

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