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遅くまで仕事をしている人を評価してしまう雰囲気はありませんか?

 

1.仕事を時間で評価している工場は生き残れない

仕事の価値を「時間」で評価していると、現場は残念な思考になります。

 

長時間勤務 = 給料が増える

このような思考の元では、知恵を絞って新たな付加価値を生む発想は生まれません。

頭ではなく、時間を使えば、まぁいいやと考えるからです。

工場見える化 労務費(残業)について考える(2)

 

労務費は固定給部分と残業部分に分けて眺めます。

そのうち固定給部分は、付加価値拡大のための投資あるいは資産と考えます。

そして残業部分は、工場の生産形態や担当者の職務内容から、その妥当性を検証します。

工場見える化 労務費(残業)について考える

 

固定給部分を投資と考えれば、投資効率が問われます。

アウトプットを大きくしないとなりません。

 

管理者は、付加価値創出に貢献する仕事を、部下にさせます。

そして、なるべく単純な作業はさせないようにと考えるでしょう。

 

必然的に、残業なし仕事をやりきる仕組を考えたくなります。

仕事を時間で評価しても、いいことはない。

結果や質に注目した方が人の本質に配慮した対応であることに気付くからです。

 

存続と成長のために増やすのは仕事量(時間)ではなく、付加価値です。

この認識がなければ現場の豊かな成長はありえません。

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仕事を時間で評価しているうちは、現場の自律性は生まれません。

「やらされ感」たっぷりで、指示に依存する職場ができてしまいます。

こうした工場が、これからの時代に生き残ることは絶対にありません。

 

 

2.現場リーダーA君に気付かせてもらったこと

自動車部品ラインの管理者を担っていたときの話です。

仕事を時間で評価してしまい、失敗したことがあります。

 

とても仕事熱心なA君がいました。

20代後半の若手人財です。

中途入社でしたが、積極的に業務を習得してくれていました。

周囲とのコミュニケーションにも長け、とても頼りになる若手人財です。

 

時期を見て、現場リーダーへの昇格を会社へ提案しようと考えました。

そして、入社から1年ほど経過した後、会社へその旨提案し受理されました。

 

現場リーダーのような間接業務の給与は職務給のように扱われることが多いです。

基本給に管理者としての手当てが上乗せされますが、残業代はありません。

 

さて、昇格時、A君は毎日1時間ほど残業していました。

そして、昇格するにあたっての昇給額は日々の残業換算で2~3時間程度でした。

 

彼に昇給額の規模感を伝えるため、次のように彼へ伝えました。

「毎日の残業2~3時間分くらい給料が増えるよ。」と話しました。

 

つまり、現場リーダーへ昇格しても手取りは減らないよ、ということを知ってもらいたかったのです。。

昇格したとたん残業代がつかず、手取りが減ってモチベーションが・・、という話をしばしば聞きます。

そうしたことは起きないと、具体的に伝えたかったわけです。

 

現場リーダーとして現場で仕事を始めたA君の仕事ぶりは期待以上でした。

意欲的に業務に取り組み、現場を引っ張ってくれました。

 

その一方で、残業が毎日2時間、3時間に増えていました。

残業増は特別に気にかけず、「頑張っているな~。」と眺めていました。

 

ある時、A君に声をかけた時のことです。

「現場のとりまとめ役でたいへんかもしれないけど、給料も上がったことだし、頑張って!」

 

彼からの言葉にハッとしました。

「残業2~3時間分の給料が上がったから、その分仕事しないといけないと思ってガンバリマス!」

 

A君は、現場リーダーとして2~3時間残業しなければならないと考えていたようです。

上司からの言葉を、そう解釈していることに気付きました。

 

 

 

A君に改めて説明しました。

昇給したのは、

現場で成果を出してくれたからであり、

これからも、現場を引っ張る役割を担ってもらいたいから。

長い時間、働いて欲しいわけでない。

 

現場のリーダーは率先して、定時で上がれるように頑張るべきだよ、とも伝えました。

 

現場のとりまとめ役になったので、当然、やらねばならない業務が増えます。

したがって、A君の残業が増えていたのかもしれません。

 

それから、A君も仕事のやり方に工夫を加えたようです。

しばらくして、以前と同様に1時間程度の残業で退社するペースを定着させました。

 

勤務時間は短くなったわけですが、仕事の質が下がるようなことは決してありませんでした。

かえって、どんどん新たなことに挑戦していました。

 

このことがあってから、仕事を時間で評価することはやめました。

 

振り返ってみれば、

長時間働いたから良い結果が出たということは、経験上なかったことに気が付きます。

 

長時間、夜遅くまで仕事をしなければならないのは、トラブルが発生したときです。

その対応を迫られているときがほとんどでした。

 

好ましい結果が得られる時は、意外と順調に仕事が進んでいるものです。

当然、そこへ至るまでには、累積で多くの試行錯誤がありますが。

 

今後、中小の現場で求められるのは、新たな付加価値の創出です。

付加価値生産性の向上です。

 

知恵を使わねばなりません。

時間をかければ解決するわけではありません、

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経営者は、現場から極力、肉体を駆使する作業を排除します。

その代わりに、頭を駆使して、知恵を生み出しやすい環境づくりをするのです。

 

どのような環境なら、頭を使って、知恵を生み出してもらえるだろうか、と考えます。

・一方的な指示のみの職場

・フォローと評価のない職場

・5年先、10年先の見通しのない職場

・「やらされ感」たっぷりの職場

等々・・・・。

こうした職場で、現場は知恵を絞ろうという気になるでしょうか?

やる気を引き出せない職場では無理です。

 

現場からやる気を引き出せない現場をイメージすれば、やるべきことが見えてきます。

 

 

3.スウェーデンでの取り組み

働く環境をいかに整備して、知恵を絞りたくなる状況を作り出すか。

 

日本経済新聞2016年3月20日の特集記事はとても興味深かいす。

1日8時間労働という常識を問い直す取り組みがスウェーデンで広がっています。

トヨタ自動車系の販売社会トヨタ・センター・イエーテボリの事例があります。

そこのエンジニアは、午と午後の2交代制で1日6時間だけ働くというのです。

8時間勤務の時は大変だった。

車の修理で従業員達は疲れ、

納車は最大1ケ月待ち。

顧客の不満も募った。

そこで労使で話し合い、

営業時間を延ばす一方、1人当たりの労働時間を6時間に減らした。

給料は減らさず人員を2割増やしたのだ。

改革の成果はすぐに出た。

「6時間なら集中力が続く」と現場が活気づき、納期は最短で4分の1に短縮。

顧客の評判も高まり、人件費が増えても売上高と利益は5割超増えた。

「働き方のカイゼンの結果だ」。

経営者のマルティン・バンクは胸を張る。

(出典:日本経済新聞2016年3月20日)

 

付加価値生産性を向上させた事例です。

2つのことに気が付きます。

 

・やる気を引き出す環境を作り出せば、現場はそれに応えようとすること。

(それが画期的であればあるほど頑張ろうとします。)

 

・常識を問い直す程の視点でアイデアを絞り、それに挑戦すること。

(ここでは、1日8時間労働という常識を問い直しています。)

 

 

 

3-1 やる気を引き出す環境を作り出す

バンク氏は、人間の本質を理解していました。

だから、勤務時間を8時間から6時間へ25%短縮する一方で、給料据え置きを決断したのです。

現場は必ず成果を上げてくれると信じていたのです。

 

それに加え、経営者の期待に応えて成果を出した現場もすごい。

現場と経営者との信頼関係があってこその結果です。

 

人件費を増やしてでも実行し、成果を上げようというのは投資の発想です。

人件費を費用としか見ない経営者には絶対に思いつかない観点です。

 

固定費の生産性を高めて、付加価値を生み出そうと考えます。

こうなると仕事を時間で評価してもしょうがないです。

 

 

そして、経営者は現場が最大のパフォーマンスを発揮できる環境を作り出します。

この事例では、「給料従来通り、勤務時間25%減」。

これで投資を上回る成果を出すことができました。

 

付加価値生産性を高めたい昨今、現場を信じて画期的な場を作り出す経営センスが求められます。

現場を信じれば、やる気を絶対に引き出せます。

 

 

3-2 常識を問い直す程の視点でアイデアを絞る

1日に8時間は働くものだという思い込みを捨てることで画期的なアイデアが生まれました。

 

さて、8時間労働が定着したのは20世紀初めだそうです。

1919年国際労働機関が「1日8時間・週48時間」を労働基準に定めています。

 

こうした労働基準が定められることになる背景をたどると、産業革命までさかのぼります。

産業革命は18世紀半ばから19世紀にかけてイギリスを発祥としたイノベーションです。

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当時のイギリスでは「労働時間が長ければ長いほど生産性が上がる」と考えられていました。

そのため、労働時間は1日14時間で、長いときでは16時間から18時間にもなったそうです。

 

そこで、健康上の問題等で労働者による8時間労働制導入が要求されました。

そして、「1日8時間・週48時間」が国際的労働基準として定められました。

1919年に開催された国際労働機関第1回総会での成果です。

(出典:Gigazine net 2014年07月23日 8時間労働が誕生した経緯と労働時間を短縮すべき理由)

 

1日8時間労働は100年も昔の社会情勢を踏まえて決まったことです。

当時の付加価値を生み出す原動力は、機械化が進んだとは言え、基本的に「肉体・体力」でした。

 

一方、今は、少子化、高齢化、人口減少等、様々な外部変化に直面した時代です。

これからは、現場も一緒になって知恵を絞り、付加価値生産性を上げねば、生き残れません。

 

100年前と同一の基準で考えることの方が不自然です。

そこで、人件費を投資と考えます。

過去の慣習にとらわれることなく、その効率を向上させようと知恵を絞るのです。

 

アイデアが画期的であればあるほど、現場は盛り上がり、やる気を出します。

その結果、経営者といっしょになって挑戦する雰囲気が、現場に醸成されるのです。

スウェーデンでの事例は、そうしたことを教えてくれます。

 

人件費を投資と考えて、付加価値生産性を高める画期的な仕組みを一緒に考えませんか?

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